2020 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における学歴と所得:コーホートを基準とした学歴別生涯所得推計の試み
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19K21796
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尾嶋 史章 同志社大学, 社会学部, 教授 (30177224)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 教育の経済的効用 / 生涯所得 / 疑似コーホート分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出生コーホート別にみた学歴別「生涯所得」を推計することを目的としている。2020年度は就業構造基本調査の合併データを用いて、5年ごとのコーホートを単位とした「疑似パネル」データに読み替え、この疑似パネル分析から出生コーホート別に個人の生涯に沿った流れの中で、学歴別生涯所得の推計値を得ることを試みた。さらに賃金構造基本調査のデータ整備を続けた。前者に関しては、一部成果を公表した。 1.就業構造基本調査を用いた学歴別の「生涯所得」(25歳から54歳の推計所得合計)に関するコーホート間の推移に関しては、疑似コーホート分析を用いて所得関数を適用した分析を行った。その一部は、2021年3月に「公開データを用いた社会階層構造と教育の変容に関する分析」報告会において発表した。このデータを用いて推計すると、男女とも若いコーホートになるほど大卒の「生涯所得」が増加しており、学歴間格差が拡大しする傾向がみられた。ただしこの傾向は、若いコーホートが若年期から中年期にかけて相対的に所得が高い結果であり、各調査時点の経済状況とその時点での年齢との間の交互作用であるコーホート効果が存在することも同時に明らかになった。 2.賃金構造基本調査データに関しては入力データのチェックを終えて、先行研究を踏まえて推計を始めたている。その結果、先行研究のモデルの問題点が明らかになり、その修正を行っている。今後その修正結果に基づき推計作業を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
就業構造基本調査を用いた分析は、疑似コーホート分析を用いて一定の分析結果を提示できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
賃金構造基本調査を用いた分析が残るが、推定モデルの問題点を修正した上で、今年度分析結果を得られるよう、作業を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の研究計画では、研究過程においてフランスの研究協力者との意見交換や成果の国際学会での報告のための旅費を計上していたが、この部分が執行できなかった点の影響が大きい。また賃金構造基本調査の推計モデルの問題点が明らかになったため、その点の検討が必要となり、謝金の執行がずれ込んだことも影響した。 今年度においても海外である学会報告は難しいと考えられるため、課題遂行のための作業の効率化を図るため機器や、オンライン上での研究打合せの円滑化のための研究環境整備等に資金を投入して、成果をまとめることにしたい。
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