2020 Fiscal Year Research-status Report
地理情報システムによる小児の身体活動・睡眠に及ぼす地理・社会環境の影響
Project/Area Number |
19K21797
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石井 好二郎 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30243520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 大士 筑波大学, 体育系, 助教 (90741976)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 思春期 / 身体活動 / 地理情報システム / 小学生 / 中学生 / 環境 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児は自由に移動できる範囲が狭く、近隣環境の影響をより受ける可能性がある。しかし、これまで日本人小児を対象とした近隣環境の違いによる健康格差を明らかにした研究はない。本研究は、近隣の建造環境が思春期前期小児の身体活動と肥満傾向に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 北海道から沖縄まで日本各地の小学5年生~高校3年生に対し自記式質問紙調査を行い、21491名の質問紙が回収された。その中から通学区域(校区)の概念のない高校生や国立小中学生、及び回答の不備を除き、本研究では公立学校に通う小学5年生~中学生3年生7082名を分析対象とした。日本語版IPAQ思春期前期用(IPAQ-JEA)を使用し1日当たりの高強度身体活動(VPA)時間、中高強度身体活動(MVPA)時間を調査した。また、質問紙で取得した学年、性別、身長、体重より肥満度を求め、20%未満を非肥満群、20%以上を肥満傾向群とした。さらに、地理情報システム(GIS)を用い校区内の身体活動環境、食環境の密度を算出した。 重回帰分析の結果、VPA時間と校区内の公園(β:0.07)、駅(β:0.04)、交差点(β:0.05)の密度との間に、MVPA時間と校区内の公園(β:0.06)、駅(β:0.04)の密度との間に有意な正の関連が確認された。また、ロジスティック回帰分析の結果、校区内の身体活動環境、食環境の密度をそれぞれで投入したモデルでは、小児の肥満傾向に対し、校区内の駅の密度が有意な負の関連(OR:0.53)、校区内のコンビニエンスストアの密度が有意な正の関連(OR:1.21)を示した。校区内の身体活動環境、食環境の密度を同時に投入したモデルでは校区内のコンビニエンスストアの密度のみ、肥満傾向と有意に正に関連した(OR:1. 28)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2万名を越える児童・生徒の身体活動や睡眠、肥満のデータは入力を終えている。地理情報システムも様々なデータを統合し、現時点ではさらに信頼性の向上のため、地区の社会経済状況の水準を指標化した地理的剥奪指標も加えた分析を行うなど、おおむね順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、気候や都市緑化の影響、食環境をコンビニエンスストア、ファストフード店、スーパーマーケット・デパートなどの営業形態別、身体活動環境の公園、運動施設の面積等も加味して分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により、学会発表や研究旅費での使用が予定通りに進まず、別の研究用途としたため次年度使用額が生じた。次年度も感染拡大は収束していないが、差額が生じないよう研究計画を修正しつつ実施する。
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