2019 Fiscal Year Research-status Report
社会的エンリッチメント環境が社会的・非社会的記憶能力に及ぼす影響
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19K21806
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 一夫 筑波大学, 人間系, 教授 (30282312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一谷 幸男 筑波大学, 人間系, 教授 (80176289)
小澤 貴明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90625352)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的記憶 / 養育環境 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやげっ歯類などの社会的な種は,認知機能に関して社会的環境の影響を受けることが指摘されている。本年度は,自発的物体再認課題およびそれを社会的再認記憶に応用した課題を用いて,飼育匹数 (集団の大きさ)が物体および社会的再認記憶の記憶容量に及ぼす影響について検討した。 被験体としてWistar-Imamichi系雄ラットを,刺激個体として同系統の幼少雄ラットを用いた。出生日をPostnatal Day (PND) 0とし,PND21で被験体を3群に振り分けた。Social Separation (SS) 群は個別に飼育され, Standard Housing (SH) 群は通常の飼育ケージに3匹で飼育された。Social Enrichment (SE) 群は,大きな収納ケースを2つの円筒で繋いだ特別なケージを作成し,10匹で飼育した。社会的弁別課題の見本期では,幼少個体を2~5匹提示し,5分間の遅延後のテスト期では見本期で提示した個体の1匹を別の新奇な個体と入れ替えて提示し,各刺激に対する被験体の探索時間を測定した。自発的物体再認課題では,幼少個体の代わりに色や形態,感触が異なる様々な物体が提示された。 その結果,提示項目数5項目条件において,SH群では,新奇個体と新奇物体のいずれも弁別できなかったのに対して,SE群は新奇個体と新奇物体のどちらも弁別できており,同時に5つの他個体や物体を記憶できることが示された。一方SS群では,新奇物体を弁別することができたが,既知個体と新奇個体を弁別することはできなかったことから,個別飼育は社会的記憶にのみ影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,初年度は飼育環境(同居個体数)が社会的記憶に影響することを実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り推進していく予定である。Wistar-Imamichi系雄ラットを用いて,飼育条件(個別,標準,多頭)×記憶負荷量(小,大)の計6条件で社会的再認記憶課題および自発的物体再認課題を行い,各課題実施の2時間後に灌流固定し,免疫組織化学的手法によって各記憶課題に関わる脳領域を同定する。
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Causes of Carryover |
行動解析システムの装置作成が当初の予定より安価となったため,次年度使用額については,次年度に実施する免疫組織学的検索に用いる抗体等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)