2019 Fiscal Year Research-status Report
”声”の有するパラ言語情報から類推可能な発話者の個人特性の検討
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19K21810
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸 俊行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10454084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣澤 愛子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (10345936)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | パラ言語情報 / 個人特性 / TypeA行動パターン / 自己肯定意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、発話音声が有するパラ言語情報に着目して、パラ言語情報とその発話者の個人特性との関連に関して検討を行い、パラ言語情報からどのような発話者の個人特性が推測可能なのか、またその妥当性に関して明らかにすることを目的としている。本研究で目指されているような、パラ言語情報から発話者の個人特性を含む個人情報と結びつけること、またその研究手法や研究知見に科学的妥当性が認められるようになれば、産業界のみならず学術領域においても非常に大きな意義を有するものといえる。 研究初年度にあたるため、研究は主に以下の手順で行われた。まず音声素材(実験素材)の作成とパラ言語情報と関連する個人特性の選定である。音声素材に関して、(1)有意味なある程度の長さのある文章、(2)無意味なある程度の長さのある文章、(3)説明的文章、(4)イントネーションのある発話として歌声の4つを選定して、素材提供者の協力を得て録音を行った。次に音声から推測可能な個人特性の同定として、音声から感じることのできる印象について自由記述で回答を求める調査を、50人を対象に行った。その中から、個人の内面を推察しているものを集めて、基本性格の他にTypeA行動パターンの2つを関連する個人特性とした。 昨年度の後半は、予備実験として30名を対象に4名の音声素材(4種類)を視聴した後に発話者の個人特性を推察させる実験を行った。実験の結果、音声からは基本性格の類推は難しいのに対して、TypeA行動パターンの推察は比較的容易であることが明らかとなった。 また懸案事項の一つとして、結果の分析に関するものが挙げられた。実際にどの程度音声から性格特性が類推可能かを明らかとする指針がないため、結果の経験知に基づく解釈が難しいため、対照群として一般的に性格類推が可能とされている書画からの個人特性類推を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度行った研究は下記のとおりである。 研究初年度にあたる2019年度は主に、研究の準備段階に充てられた。実験に必要な音声素材の作成や対象とする個人特性の選定、さらには予備実験を行い音声のパラ言語情報から性格がどの程度推測可能なのか、またそのデータの分析方法に関する検討を行った。音声素材の作成に関しては4種類の音声を選定したが、歌声を素材とする場合、当該曲を知っているかどうかなどの情報が妨害刺激になりうることを考慮して、実験計画書に書いた通り、実験者の方で本研究のために作詞作曲して作成した楽曲を用意し、素材提供者に歌ってもらう事で作成した。実験は予備実験の前段階の研究および予備実験までを遂行し、個人特性の選定のみならず実験における問題点の確認も行った。 分析に関しては、結果の妥当性を判断することが難しく、経験的にも分かり難いため、書画素材からの個人特性類推と比較することで行うように、実験計画をより拡張することとした。そのための実験素材づくりを行った。 基本的に研究計画に書かれてある通りに上記の通り研究は推敲されており、当初の計画通りの進行状況といえる。 このように2019年度は実験の準備段階かつデータ収集段階だったため、研究成果を発表するというフェーズには至っていなかった。実験計画に関しては福井県教育工学研究会の定例会議にて報告及び意見交換会の実施を行った。その際に、データの分析方法に関する妥当性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度に当たる2020年度は、昨年度に行われた研究を踏まえて、より実践的な研究を行っていく予定である。具体的には下記の4つを行っていく。 1.パラ言語情報と個人特性との関連の検討:昨年度の予備実験を踏まえて、個人特性を自己肯定意識とTypeA行動パターンに焦点化したうえで、音声からそれらの個人特性類推の可能性を実験的に明らかにしていく。被験者100名を一つの目安として実験を計画・行っていく予定である。 2.書画刺激からの個人特性類推に関わる実験:音声刺激からの個人特性類推の妥当性を検討するために、比較的これまでに類推可能性が明確になっている書画刺激と個人特性との関連を対照データとして収集するための実験を行う予定である。実験計画・実験手続き,データ分析に関しては音声情報に関わる実験と同様に行っていく。 3.上記二つの研究を踏まえた上で、研究成果の妥当性を確認するために、疑似的な音声カウンセリング場面を用いて、カウンセラーとクライエントの会話の中から、カウンセラーがどの程度クライエントの状況を把握可能なのかの実践的検討を行っていく予定である。カウンセラーを被験者として協力を仰ぎ、実験協力者を自己肯定意識とTypeA行動パターンの高低ごとに4群に分類し、音声カウンセリングのみで被験者を4群に同定できるのかどうかの検討を行う。 4.国際会議・学会での積極的報告:本研究は非常に探索的な要素の強い研究である。そのため、本年度は昨年度の研究知見および本年度行っている実験結果等を速やかに国際会議や国内の多くの学会で発表を行っていくとともに、研究知見をまとめた論文・報告書の作成を行っていく。
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Causes of Carryover |
研究は計画通りに進行されたが、研究計画を拡張した関係で研究成果に関する報告を行うことが出来なかった。そのため国際学会や国内学会等での報告,学会誌等の論文掲載まで出来なかった。また、当初予定していたプリンタートナー(2台分)等の額の大きい消耗品の交換が昨年度に行う必要がなかったことが理由として挙げられる。 本年度の使用計画として、当初の使用計画通りに主に学会をはじめとした研究成果の報告と論文誌の作成、プリンタートナー等の消耗品費に充てる予定である。
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