2020 Fiscal Year Research-status Report
”声”の有するパラ言語情報から類推可能な発話者の個人特性の検討
Project/Area Number |
19K21810
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岸 俊行 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (10454084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣澤 愛子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (10345936)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | パラ言語情報 / 音声 / 性格特性 / TypeA行動 / BigFive |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発話音声が有するパラ言語情報に着目して、パラ言語情報とその発話者の個人特性との関連に関して検討を行い、パラ言語情報からどのような発話者の個人特性が推測可能なのか、またその妥当性に関して明らかにすることを目的としている。本研究で目指されているような、パラ言語情報から発話者の個人特性を含む個人情報と結びつけること、またその研究手法や研究知見に科学的妥当性が認められるようになれば、産業界のみならず学術領域においても非常に大きな意義を有するものといえる。 研究2年目に当たる2020年度は、世界中に蔓延したコロナウイルス感染症の影響により研究計画を大幅に変更することが余儀なくされた。そのため、予定していた本実験の実践及び臨床分野への応用試行を行うことが出来なかった。2020年度には、1年目に行った予備実験の結果の分析を行った。一般性格特性(BigFive)に関しては、パラ言語情報からの類推度が低いのに対して、TypeA行動に関しては、パラ言語情報から発話者の性格がある程度、類推可能であることが示唆された。それらの結果に関して、第37回日本教育工学会秋季大会にて発表を行った。 また2020年度後半には、研究計画の見直しを行い、音声刺激に対する対照刺激として筆跡刺激を用いた実験計画の立案を行った。それに伴い筆跡刺激の作成および実験準備を行った。具体的には、男女2名(計4名)を実験協力者として、クッキーの作り方(254字)に関する文章を、原稿用紙と白紙の用紙にそれぞれ書いてもらった。本サンプル用文章は漢字、ひらがな、カタカナ、数字を網羅していることにより適切であると判断し採用した。また、音声刺激の実験計画と同様に、実験協力者に対して、性格特性に関わる質問紙への回答を求めた。4名の2要因(原稿用紙,白紙)の実験用素材の作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、発話音声が有するパラ言語情報と発話者の個人特性との関連を検討することを目的としている。そのため、研究手順として、予備実験を行い、音声刺激およびターゲットにする性格特性を明確にしたのちに、本実験を行う実験計画である。2020年度には、研究初年度に行った予備実験の結果の分析及び本実験を行う計画であった。しかし、コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて本来予定していた本実験を行うことが出来なかった。そのため、2020年度は研究計画を変更し、予備実験の分析及びその結果の公表を行った。予備実験の結果として、一般性格特性に関しては類推が難しい事、パラ言語情報との関連が少ないことが推察されるのに対して、TypeA行動は、パラ言語情報からの類推が比較的容易であることが推察された。そのため、本実験の際にはTypeA行動をターゲット特性にすることとした。また研究計画を見直し、音声に関連のある筆跡と性格特性との関連を対照刺激として取り上げることとした。それに伴い2020年度の後半には、筆跡刺激の作成を行った。なお2020年度に行えなかった実験計画は、修正した後に2021年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度に当たる2021年度は、コロナウイルス感染症の影響により実施することが出来なかった2020年度に予定していた実験計画を遂行していく。具体的には下記の4つを行っていく。 1.パラ言語情報と個人特性との関連の検討:昨年度の予備実験を踏まえて、個人特性を自己肯定意識とTypeA行動パターンに焦点化したうえで、音声からそれらの個人特性類推の可能性を実験的に明らかにしていく。被験者100名を一つの目安として実験を計画・行っていく予定である。 2.書画刺激からの個人特性類推に関わる実験:音声刺激からの個人特性類推の妥当性を検討するために、比較的これまでに類推可能性が明確になっている書画刺激と個人特性との関連を対照データとして収集するための実験を行う予定である。実験計画・実験手続き,データ分析に関しては音声情報に関わる実験と同様に行っていく。 3.上記二つの研究を踏まえた上で、研究成果の妥当性を確認するために、疑似的な音声カウンセリング場面を用いて、カウンセラーとクライエントの会話の中から、カウンセラーがどの程度クライエントの状況を把握可能なのかの実践的検討を行っていく予定である。カウンセラーを被験者として協力を仰ぎ、実験協力者を自己肯定意識とTypeA行動パターンの高低ごとに4群に分類し、音声カウンセリングのみで被験者を4群に同定できるのかどうかの検討を行う。 4.国際会議・学会での積極的報告:本研究は非常に探索的な要素の強い研究である。そのため、本年度は昨年度の研究知見および本年度行っている実験結果等を速やかに国際会議や国内の多くの学会で発表を行っていくとともに、研究知見をまとめた論文・報告書の作成を行っていく。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナウイルス感染症の影響により、本来予定していた研究計画を遂行することが出来なかった。特に学内への学生の登学禁止措置,出張等の自粛により、福井大学や他拠点で行う予定だった本実験を行うことが出来なかった。そのために必要な予算の執行が出来なかった。2021年度には、コロナウイルス感染症の影響で遂行することの出来なかった計画をおこなっていく予定である。具体的には、1.パラ言語情報と個人特性との関連の検討,2.書画刺激からの個人特性類推に関わる実験,3.研究成果の妥当性確認のための疑似的な音声カウンセリング場面を用いての実践研究を実施する。
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Research Products
(1 results)