2020 Fiscal Year Research-status Report
Cognitive, motivational, and cultural bases of Japanese work ethic
Project/Area Number |
19K21812
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
唐沢 穣 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90261031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 敬子 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (10344532)
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 教授 (20367725)
鶴田 早織 (塚本早織) 愛知学院大学, 教養部, 講師 (80794073)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | 勤労意識 / 道徳観 / 規範 / 文化 / イデオロギー |
Outline of Annual Research Achievements |
【理論的作業】勤勉を社会規範や社会的慣習とは異なる道徳の問題として認識する過程について、その理論的枠組みを確立する作業を行なった。西欧的文化圏における理論的モデルの中から、Janoff-Bulman & Carnes (2013) による Model of Moral Motives (MMM) を取り上げ、日本をはじめとする他の文化における勤勉観との共通点や相違について論考した。 【実証的作業】MMMが想定する2つの動機次元についての測定を目的とした「道徳動機尺度」(MM尺度)の日本語版を作成し、その信頼性および妥当性を検討した。その結果、北米地域において行われてきた実証研究との比較対象を行うに足る日本語版尺度の作成に成功した。 また、勤勉に関わる道徳判断の基礎に、人物評価に基づく道徳判断(person-based moral judgment) の過程があることを検証するために、社会的成功(および失敗)の原因帰属過程と人物評価の関係を調べた。北米における先行研究では、努力よりも才能を重視されることを示す結果と、才能を重視することを示すものとが混在している。これを日本において検証するため、刺激人物の社会的成功が当人の才能・努力のいずれによるかの情報を操作した実験を行なった。結果は、全般に才能型よりも努力型の人物の方が、職場の同僚として選好され、能力が高く評価されることを示した。また努力型人物に対して男性性がより強く知覚され、agenticity に関する評価が関与している可能性が示唆された。ただし上記はいずれも専門職における成功において顕著で、一般職における努力は比較的低い能力や女性性の知覚と関連していた。 ここでもMM尺度の信頼性および妥当性が示されたほか、政治的イデオロギーや勤労倫理意識などの変数との関連から、勤勉に対する評価がもつ道徳的性質が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ・ウィルスの感染拡大という状況のもとで、実施が可能な実験はオンライン実験に限られ、実験室での対面実施が必要なプライミング実験などは、全く行うことができなかった。また、外部講師を招いた研究会も見送りを強いられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
感染状況しだいでは2021年度も対面実験に困難が予測される。その場合は、オンラインでの実験・調査によって明らかにできる事項に分析対象を移行する準備を行う。研究代表者および分担者は、近隣の大学に勤務するどうしであるため、研究会の開催は比較的容易であるが、外部講師を招いてのミーティングについてはオンライン開催の対応を迫られると予測される。実験研究の進捗状況によっては、次年度への延長を申請する可能性も念頭に置きながら、実施可能な課題を達成していくことを目指す。一方、研究成果の公表については、論文執筆を中心に促進を図る。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ・ウィルスの感染拡大により、当初予定していた実証研究のうち、対面で実施する実験が一切行えなかったこと、また文化心理学的研究の実施や研究集会の開催のための出張旅費の支出が無かったことなどが主な理由である。
|
Research Products
(1 results)
-
[Book] 現代心理学辞典2021
Author(s)
子安増生・丹野義彦・箱田裕司(監修)
Total Pages
996
Publisher
有斐閣
ISBN
9784641002661