2020 Fiscal Year Research-status Report
Learning process of trichromatic-like color name responses of dichromats
Project/Area Number |
19K21817
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60294998)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 2色覚 / 色名応答 / 3色覚類似色名応答 / 学習効果 / 色覚異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
色覚には多様性があり,3種類の錐体うち1種類を持たない2色覚という色覚特性のヒトもいる.2色覚は,3色覚が見分けられる色を見分けられない場合があることから,色覚異常とも呼ばれている.1型2色覚,2型2色覚では,錐体の応答比から,2色覚には見分けられないと予測される色でも,比較的大きな刺激を長時間観察すると,赤や緑という3色覚と類似した色名応答を示す.この2色覚の3色覚類似色名応答がどのような情報に基づいてなされているかは,おおよそ30年間,大きな疑問であった.そこで,2色覚はどのような情報を手掛かりに色名応答を行っているのかという問題について,学習効果という視点から検討するのが本研究課題の目的である. 2年目となる令和2年度は,2つの実験を行った.ひとつ目の実験では,近年,第3の光受容器として発見された内因性光感受性網膜神経節細胞の応答の差が学習の手がかりとなっているのではないかという仮説を立て,内因性光感受性網膜神経節細胞の刺激量をパラメータに2色覚の色名応答を測定した.その結果,内因性光感受性網膜神経節細胞の刺激量に依存した2色覚の色名応答の違いは明確に見られなかった. ふたつ目の実験では,2色覚に対し,3色覚の色名をフォードバックすることによって.色名の学習を課し,その学習効果を測定した.その結果,明確な学習効果は認められなかった. 以上の2つの実験結果から,現在のところ,2色覚の3色覚類似色名応答の手がかりも,学習効果も明らかにすることができていない.次年度も,被験者を増やすことや内因性光感受性網膜神経節細胞の刺激量の差を大きくするなどし,引き続きこれらの実験を継続していく.さらに,動画を用いた実験や機械学習による色名応答実験を行い,画像そのものに3色覚類似色名応答の手がかりとなる情報が含まれている可能性について検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの蔓延により,対面での実験が困難であったため,被験者数が少なく,現在,得られている結果を一般化するには,今後も,被験者実験を継続する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染のため,令和2年度は,十分な被験者実験ができなかったため,最終年度である令和3年度も引き続き,2色覚の3色覚類似色名応答の手がかりと,さらに,3色覚類似色名応答がその手がかりの学習によって成立しているのかどうかを被験者実験を通して検討していく.さらに普段の生活の中で,赤と緑の表面色の振る舞いを検討するために,2色覚シミュレーションを施した動画を作成し,機械学習によって,赤と緑の振る舞いの差を検討していく計画である. 以上の研究結果を総合的にまとめ,本研究課題の目的である2色覚の3色覚類似色名応答の獲得過程について考察を行っていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため,緊急事態宣言や大学の行動制限の指針などによって,対面による被験者実験を見送ることがあり,被験者実験をほとんど実施することができなかった.これにより,実験の被験者謝金や被験者派遣の業務委託に関する支出がほとんどなく,次年度に繰り越すこととなった. 次年度は,新型コロナウィルス感染予防措置を行いつつ,被験者実験を実施していく予定である.また,令和2年度は多くの学会が中止になったこともあり,成果発表や学会参加の機会が減少した.次年度は積極的に成果を発表していく計画である.
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