2020 Fiscal Year Annual Research Report
母子間デタッチメントの神経基盤および社会性発達に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
19K21822
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 教授 (50347308)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | デタッチメント / 視床室傍核 / 前頭前皮質 / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
密な母子関係を生み出す哺乳機能を獲得した哺乳類において、母と子の結びつきである愛着(アタッチメント)が子の身体や心の発達に影響を与えることは、多くのヒト研究からも明らかである。一方、離乳時期に母と子が離れる「デタッチメント」も母子によって違いがあり、ヒトでは母から無視や虐待をうけながら親離れする場合や、逆に離乳時期を過ぎても母が子に対して過干渉な場合もある。また虐待を受けた子は虐待をする親となり易いといった負の連鎖なども示唆されているが、デタッチメントスタイルが子の社会性発達にどのような影響を及ぼすのか、神経メカニズムまで含めた体系的な理解には程遠い現状である。本研究では、母マウスのデタッチメントを制御するメカニズムを解明するとともに、デタッチメントスタイルと子の社会性発達の関連性も明らかにし、社会性発達研究の新しい領域を開拓することを目的とする。これまで、育子中の母マウスが見知らぬオスマウスと連日繰り返し出会う社会ストレス環境では、母マウスはその侵入オスマウスが居ない時でも子マウスを積極的に抱え込む行動が顕著に減少し、子マウスとの接触が低下するが、通常環境下でも報酬の価値判断に重要な母マウスの視床室傍核にオキシトシン拮抗薬を長期間作用させると子マウスを抱え込む行動が減少することから、視床室傍核へのオキシトシン神経系の入力がデタッチメントを抑制的に調節していることを示してきた。また社会ストレス環境下の母マウスでは、行動の切り替えといった実行機能に重要な前頭前皮質から視床室傍核に投射する神経回路が特異的に活性化することも見いだしたことから、人工受容体を利用してこの神経回路を人為的に活性化させたたところ、子マウスを抱え込む行動が減少した。こられのことから、視床室傍核へのオキシトシン神経系の入力と前頭前皮質からの入力のバランスがデタッチメント制御に重要であることが示唆された。
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