2020 Fiscal Year Research-status Report
パーフェクトイド空間を用いたGross-Zagier型公式の研究
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19K21829
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | パーフェクトイド空間 / Gross-Zagier型公式 / 志村多様体 / Rapoport-Zink空間 / 数論的交叉数 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gross-Zagier公式とは,モジュラー曲線上のHeegner点に対し,その数論的な複雑さを測る「自己高さペアリング」という値を「保型L関数の微分係数」という解析的な量によって記述する,非常に興味深い等式であり,楕円曲線に対する有名な未解決問題であるBSD予想にも応用されている.パーフェクトイド空間の理論を用いることで,この公式を高次元のモジュラー多様体に拡張し,BSD予想の一般化であるBeilinson-Bloch-Kato予想に貢献することが本研究課題の主目的である. 前年度に,Gross-Zagier公式の局所版にあたる,数論的基本補題という予想がWei Zhangによって解決されるという大きな動向があった.本研究課題の鍵を握る「無限レベル版の数論的基本補題」の確立のためには,Wei Zhangの手法を正確に把握することが不可欠であると考えられたため,前年度に引き続き,今年度もWei Zhangの証明を分析する作業を行った.その結果,証明の概要を把握することはできたが,本研究課題の目指す方向とはかなり異なった種類の議論を行っていることが分かり,具体的な成果には繋げることができなかった.数論的基本補題の証明について,少人数で感染に十分注意した対面の勉強会を企画していたが,それが緊急事態宣言によって開催できなくなるなど,コロナウイルス感染症の影響が予想外に大きく,予定していた計画に沿った研究を行うのが非常に困難な一年であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画は,複数の海外渡航および海外からの研究者の招聘を前提としたものであったが,コロナウイルス感染症によりそれらが不可能となり,研究手法を大きく変更する必要が生じた.今年度は,オンラインでの討論や研究集会への参加を含め,様々な代替手段を試したが,それらに慣れることは想像以上に困難であり,満足に研究を進めることができなかった. また,Wei Zhangによる数論的基本補題の証明を理解することに時間を割いたが,その結果,本研究課題の目指す方向とはかなり異なった種類の議論を行っていることが判明した.これは予想外のことであり,研究が遅れた原因の一つである.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に,American Institute of Mathematicsを訪問してユニタリ型志村多様体のTateサイクルに対する研究に取り組んだ.そのときは具体的な成果を挙げることができなかったが,この方向性は有望であると思われるので,今後はそちらに重点的に取り組みたいと考えている.
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Causes of Carryover |
今年度は,コロナウイルス感染症の影響で,計画していた研究集会や国内外への出張等が全て中止となり,次年度使用額が発生した.次年度に海外渡航が可能になるならば,海外出張に使用して,今年度に行えなかった情報収集を行う予定である.また,海外渡航が不可能である場合は,オンライン講演の謝金等に使用することも検討する.
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