2021 Fiscal Year Research-status Report
パーフェクトイド空間を用いたGross-Zagier型公式の研究
Project/Area Number |
19K21829
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
Keywords | パーフェクトイド空間 / Gross-Zagier型公式 / 志村多様体 / Rapoport-Zink空間 / 数論的交叉数 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gross-Zagier公式とは,モジュラー曲線上のHeegner点に対し,その数論的な複雑さを測る「自己高さペアリング」という値を「保型L関数の微分係数」という解析的な量によって記述する,非常に興味深い等式であり,楕円曲線に対する有名な未解決問題であるBSD予想にも応用されている.パーフェクトイド空間の理論を用いることで,この公式を高次元のモジュラー多様体に拡張し,BSD予想の一般化であるBeilinson-Bloch-Kato予想に貢献することが本研究課題の主目的である.本年度は,局所志村多様体(モジュラー多様体のp進類似)のある意味での一般化にあたる局所シュトゥカのモジュライ空間に注目し,その数論的交叉数に関する成果を得ることを目指した.局所シュトゥカのモジュライ空間を考察するには,パーフェクトイド空間の世界における代数空間の類似物である金剛空間の理論が必要になるため,まず,Scholzeによる論文“Etale cohomology of diamonds”やFargues-Scholzeによる論文“Geometrization of the local Langlands correspondence”などを通して,金剛空間についての情報収集を行った.得られた情報は,GSp(4)のRapoport-Zink空間のエタールコホモロジーの研究に有益に働いたが,数論的交叉数に関して有意義な成果を得るところまでは至らなかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画は,複数の海外渡航および海外からの研究者の招聘を前提としたものであったが,前年度以降,コロナウイルス感染症によりそれらが困難となったため,研究手法を大きく変更することを余儀なくされていた.しかし,オンラインでの討論や研究集会への参加といった代替手段は,時差の関係で限界があり,それによる有益な成果はほとんど得ることができなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパを中心に,コロナウイルス感染症の影響は収まりつつあり,来年度は複数の研究集会が対面で開催される見込みである.当初の計画通り,それらに参加し,専門家との研究討論を通して,研究の遅れをとり戻したいと考えている.
|
Causes of Carryover |
今年度は,前年度に引き続きコロナウイルス感染症の影響で,計画していた研究集会や国内外への出張等の多くが中止となり,次年度使用額が発生した.次年度は海外渡航が可能になる見通しであるため,海外出張を中心とした旅費に使用して,今年度に行えなかった情報収集を行う予定である.
|