2019 Fiscal Year Research-status Report
漸近双曲性とYoccoz's puzzleを用いたPalis予想解決への挑戦
Project/Area Number |
19K21835
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 博樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00467440)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 力学系 / エノン写像 / ロジスティック写像 |
Outline of Annual Research Achievements |
無限回くりこみ可能でない任意のロジスティック写像が大偏差原理を満たすことは、すでに代表者等の以前の研究で本質的に証明されていた。懸案であった無限回くりこみ可能なロジスティック写像について、2019年5月のフランス滞在中に辻井正人氏(九州大学)との議論により新たな着想を得て、大偏差原理を示すことができた。2020年1月に本研究費を用いて九州大学に出張し、辻井氏との共著論文を完成させ、すでに査読付き国際学術誌に投稿中である。ここで用いられた議論をさらに発展させ、無限回くりこみ可能なロジスティック写像の周期軌道に関する大偏差原理の証明にも成功し、この結果を研究集会「エルゴード理論とその周辺」(新潟県・長岡市)などで講演した。この成果をまとめた単著論文もすでに作成し、査読付き国際学術誌に投稿中である。 2019年12月には, 本研究費を用いてAle Jan Homburg氏(University of Amsterdam, the Netherlands)を訪れ、連分数展開に関するセミナーを行うとともに、Homburg氏と1次元独立同分布ランダム力学系の間欠性について集中的に議論を行った。 本研究の主要課題であるエノン写像については、最初の分岐パラメーターでの周期軌道の分布に関する大偏差原理をパズルピースを用いて示すための下準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
エノン写像とよばれる具体的な2次元力学系の安定性を含む精密な構造をパズル(Yoccoz's puzzle)を用いて解析することが当初の計画の中心であったが、今年度はあまり取り組むことができなかった。しかしその原因は、ロジスティック写像の大偏差原理など、関連する他の研究が当初の予想以上に進展したためであり、これらの研究成果をすでに論文にまとめ投稿中である。また、エノン写像の研究については、本格的な研究遂行のための準備は整っている。よって「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
他の研究の進捗が落ち着いた後にエノン写像の研究に戻る。最初の分岐パラメーターにおける不変多様体から構成されるパズルピースを用いて、周期軌道の分布に関する大偏差原理を証明する。
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Causes of Carryover |
2019年度に行った2回のフランス出張において、いずれも先方から旅費・滞在費の援助を得ることができ、本研究費から支出する必要がなくなった。また、2020年3月に参加を予定していた複数の国内研究集会がコロナウイルス感染拡大防止を理由にキャンセルされたため。 力学系関連図書などの購入のための物品費、共同研究遂行研のための出張、情報収集や発表のための学会参加での旅費使用などに用いる。
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Research Products
(3 results)