2022 Fiscal Year Research-status Report
漸近双曲性とYoccoz's puzzleを用いたPalis予想解決への挑戦
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19K21835
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 博樹 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00467440)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 力学系 / エノン写像 / 双曲性 |
Outline of Annual Research Achievements |
エノン写像の分岐問題を、Yoccozのパズルを用いて解析することが本研究開始当初の目標であった。エノン写像の分岐パラメーター通過後のダイナミクスの解析は非常に難しいため、エノン写像を直接考察するのではなく、その一次元モデルである単峰写像や、記号モデルである可算マルコフシフトが生成する力学系を詳細に考察し、エノン写像の解析のための手がかりを得ることを引き続き試みた。前年度に、周期軌道の大偏差解析に関して決定論的力学系(無限回繰りこみ可能な単峰写像)とランダム力学系の両方で結果を得ていた。当該年度は、前者の結果をまとめた論文が国際学術雑誌「Nonlinearity」に受理された。また、Gibbs測度を持たない可算マルコフシフトの周期軌道の漸近分布を大偏差解析により考察し、プレプリントにまとめた(https://arxiv.org/abs/2301.02841)。2023年3月には力学系とエルゴード理論、気象科学に関する国際ワークショップ「International Workshop on Ergodic Theory, Dynamical systems and Climate Sciences」を主催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エノン写像の大域分岐構造の解析への手がかりを得るために始めた大偏差原理、熱力学形式、マルチフラクタル解析などに基づくエルゴード理論的な研究がそれら自身で大きく発展し、特にエノン写像の一次元モデルである単峰写像についてはいくつかの有望な成果が得られている。これらの成果を非双曲的なエノン写像の解析に本格的に繋げることはまだできていないが、少なくとも最初の分岐パラメーターでの解析に繋げるための手がかりは徐々に得られつつある。よって本研究を総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
最初の分岐パラメーターでのエノン写像の非遊走集合上のダイナミクスは2シンボルで自然に記号化可能である。この2シンボル(有限)フルシフト上で自然な幾何ポテンシャルを考える場合にはGibbs測度は存在しないが、ある部分領域へのfirst return mapをとることで、この有限フルシフトを実質的に可算マルコフシフトで表現でき、対応する誘導ポテンシャルは良い性質をもつ。このため、前述の結果(https://arxiv.org/abs/2301.02841)を応用することが可能なのではないかと考えられるので、詳しい検討を行う。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウイルス感染の流行とそれに伴う蔓延防止対策、およびワクチン摂取状況に伴う日本への出入国制限のため,2022年度も当初に予定していた国外出張を全てキャンセルせざるを得なかった。このため、次年度使用額が生じた。 2023年8月に開催予定の国際会議「KiPAS Dynamics Days 2023」のための招聘旅費、会議費、会場施設費などに使用する。
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