2019 Fiscal Year Research-status Report
ソフト化学プロセスによるキタエフスピン液体へのキャリアドーピング
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19K21837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大串 研也 東北大学, 理学研究科, 教授 (30455331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 良宗 東北大学, 理学研究科, 講師 (30435599)
青山 拓也 東北大学, 理学研究科, 助教 (80757261)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | キタエフスピン液体 / 強相関電子系 / 金属絶縁体転移 / 電荷秩序 / インターカレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、キタエフスピン液体物質RuCl3へのインターカレーション系の新物質開発を進めた。キタエフスピン液体物質RuCl3を、ヨウ化物AI(A=Li,K)の溶けたエタノール中で加熱することで、インターカレーション系AxRuCl3yH2Oを合成することに成功した。アルカリ金属が挿入される過程で、Ruイオンは還元されており、電子ドープされていることになる。ICP発光分析とTG分析を通して組成を、またX線回折実験により結晶構造を同定した。その結果、A=Kの場合には1層のH2O分子が挿入され、A=Liの場合には湿度に応じて1層あるいは2層のH2O分子が挿入されることが分かった。得られたキャリアドープ系AxRuCl3yH2Oの基礎物性を測定した。 室温における電気抵抗率はキャリア注入に伴い減少する。しかし、全温度領域で金属的な振る舞いは示さず、200K付近において金属絶縁体転移を示すことが分かった。この温度において、電荷整列が生じていると考えられる。また、磁化率と比熱の測定を通して、母物質RuCl3で10K付近に観測される磁気秩序は抑制されること、特にA=Liの2層系においては2Kまでの範疇で存在しないことが判明した。電荷整列温度および磁気転移温度は、アルカリ金属の種類にはさほど影響を受けないが、RuCl3層の層間距離に強く依存することは分かった。これは、2次元性が強いと量子揺らぎが発達し、相転移が抑制されることを物語っている。以上の結果より、キタエフスピン液体近傍において、ユニークな電子状態が存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数のインターカレーション系の新物質開発に成功し、新奇な電荷整列現象を見出すことができた。その結果を論文発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
他のインターカレーション系の開発に加えて、キタエフスピン液体候補物質の開発も進める。
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