2020 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト化学プロセスによるキタエフスピン液体へのキャリアドーピング
Project/Area Number |
19K21837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大串 研也 東北大学, 理学研究科, 教授 (30455331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 良宗 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30435599)
青山 拓也 東北大学, 理学研究科, 助教 (80757261)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | キタエフスピン液体 / 強相関電子系 / 金属絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属塩化物RuCl3は、キタエフ型量子スピン液体の候補物質として盛んに研究が行われている。我々は、高圧合成法を駆使することで、新たに関連物質RuBr3およびRuI3を発見した。2020年度は、それらの物質の固溶体Ru(Cl1-xBrx)3 (x = 0-1)およびRu(Br1-yIy)3 (y = 0 - 1) を系統的に作製し、その結晶構造と電子物性を評価した。結晶構造は、多くの組成でR-3の対称性を有しており、理想的な蜂の巣格子が形成されていることが分かった。電気抵抗率から見積もった電荷ギャップは、配位子をCl→Br→Iと変えるに従い系統的に小さくなり、RuI3においては半金属的な伝導を示すことが分かった。これは、配位子を変えることに従いバンド幅が増大し、モット転移が生じたものと理解される。反強磁性転移温度は、RuCl3の7-14 KからRuBr3の34 Kに増加した後に減少していき、RuI3では完全に消失する。こうした非単調な反強磁性転移温度の振る舞いは、絶縁体相において次近接の相互作用が働いていること、および半金属相においてパウリ常磁性を示すことから理解される。我々が新たに開発した固溶体は、キタエフスピン液体と強相関半金属を繋ぐモット転移系として意義があり、今後、モット転移の微視的メカニズムを解明することが望まれる。本研究は、ソフト化学プロセスによりキャリア注入を施すための新たなプラットフォームが出来たという意義もある。これまでに、層間にカチオンを挿入することで電子物性を制御する萌芽的成果を得た。
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