2019 Fiscal Year Research-status Report
Studies of strongly-correlated electrons at ultralow temperatures by thermal-expansion measurements
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19K21842
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 穣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10464207)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 超低温測定 / 熱膨張率 / 強相関電子系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では熱膨張率測定を希釈冷凍機温度以下の超低温度(~1mK)まで拡張することで、超低温度までの電子物性研究を開拓することにある。現在、様々な固体電子物性研究が市販の希釈冷凍機を用いて低温(~20mK)まで行われているが、より低温の超低温領域(~1mK)までの測定が必要な研究テーマが現れている。超低温環境自体は核断熱消磁冷凍機を使うことで得られるのに対して、超低温領域まで固体電子物性測定が行われた例はほとんど無く、超低温まで有効な測定方法が不明である。本研究では特に、熱膨張率を応用することで、比熱測定のような相転移探索を超低温度まで可能にすることを目的としている。今年度は以下のような進展があった。 (1)本研究で必要な小型膨張計を超低温装置に導入するための装置設計を行った。さらに、その予備測定を希釈冷凍機で行うために必要な周辺部品の設計と必要な周辺回路、同軸配線の制作等を行った。 (2)本研究が対象とするf電子超伝導物質CeCoIn5では超低温までの磁気トルク測定から磁気的異常が超低温領域で見つかっていたが、その詳細はわかっていなかった。熱膨張率測定から、この相転移を明らかにする本研究と並行して、核磁気共鳴測定を用いてその詳細を明らかにする測定を行った。その結果、臨界磁場直上の5Tにおいて核磁気共鳴の縦緩和率の温度依存性が相転移と思われる変化を示すことが分かった。これは磁気トルク測定で見られた変化に対応した磁気変化を核磁気共鳴で測定できた可能性を示している。また、この成果から超低温度領域まで核磁気共鳴を行う際のノウハウを確立することができた。今年度はこれらの研究成果を論文にまとめ、投稿することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小型膨張計を超低温装置に導入するために必要な周辺部品などの設計を行うことはできた一方、研究計画の採択後に開始した小型膨張計の購入手続きは、海外拠点における受注生産品であったことなどの理由から、予想よりも時間を要した。その結果、小型膨張計のテスト運転を行うことはできなかった。また、予備実験のためには現在の希釈冷凍機を改造する必要があったが、希釈冷凍機を利用する共同利用のユーザーが途切れず、装置改造に必要な時間を十分にとることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
テスト測定に入るためには、まだまだ装置改造や測定装置周辺の設計と部品製作が必要だが、コロナ問題によって必要な作業ができない状況が3月末から続いている。今後の方策は極めて不透明であるが、制限が解除され次第、装置開発を急ぎ、超低温度におけるテスト運転を速やかに開始する。
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Causes of Carryover |
小型膨張計の購入手続きに予想よりも時間を要した影響で、周辺機器の設計に遅れが生じて、周辺電子部品にかかる費用が残って次年度使用額が発生した。次年度は今年度の分も含めて計画通りに経費を利用して研究を進める予定である。
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Research Products
(5 results)