2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K21854
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 琢哉 東京工業大学, 理学院, 教授 (40451885)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ラマン散乱 / 円偏光 / マグノン / フォノン |
Outline of Annual Research Achievements |
振動数ω0の光が試料に入射すると、ω0の光(レイリー散乱光)のほかに試料中の素励起の振動数Ωだけシフトしたω0±Ωの光が散乱される現象をラマン散乱とよぶ。ラマン散乱分光法は1928年の発見以来、結晶の構造、結晶を構成する原子間やイオン間の相互作用について知見を得る上で不可欠な手法であり、赤外分光法と相補的な関係にある。しかし、直線偏光を用いたラマン散乱分光法では、磁性体・誘電体結晶中のスピン波(マグノン)や格子振動(フォノン)の振動モードを探索・同定することが困難である場合も多い。本研究では、磁性体・誘電体結晶中のマグノンやフォノンの振動モードを、円偏光を用いたラマン散乱分光法によって探索・同定することを目的とする。 今年度はフェリ磁性体YIGにおける光学マグノン(Kaplan-Kittel交換共鳴モード)を円偏光ラマン散乱を用いて初めて観測したことを論文発表した。 さらにカイラル物質α-HgS, Teにおいて円偏光ラマン散乱を測定し、A1モード、Eモードのフォノンを観測した。Eモードは入射光と散乱光の円偏光角運動量が逆符号のときにラマンシフトが分裂していることを見出した。並行してフォノンの第一原理計算を行い、Γ点で縮退していたEモードがA点に向かって分裂していることを確認し、実験結果において見出された分裂を確認できた。さらに第一原理計算においてフォノンの角運動量と擬角運動量を計算し、実験結果と比較することで、光とフォノンの角運動量保存則を実証することができた。
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