2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K21855
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
岩下 靖孝 京都産業大学, 理学部, 准教授 (50552494)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 粉体 / ヤヌス粒子 / 自己組織化 / 両親媒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「親水面と疎水面を併せ持つ両親媒性粒子からなる粉体と液体の混合系」という新規な粉体系の創成を目指している。粉体系では、界面活性剤ではよく知られている両親媒性の効果はほとんど研究されていない。そこで実際に様々な両親媒性粉体粒子を作成し、液体との混合系が示す構造や物性の基礎的な特徴を解明する。 2019年度はピッカリングエマルション(PE)を利用した両親媒性粉体粒子の作成に取り組んだ。油水界面に部分濡れする微粒子を水と油に混合すると、微粒子が油水界面に吸着し、油水分散状態を安定化させることができる。これがPEである。今回は粒子直径が0.35-0.50mmのガラスビーズを用い、これを融点が60℃程度のパラフィンを溶かしたものに分散させた。この分散液に界面活性剤DDABの水溶液を加えて撹拌し、PEを形成した。次にパラフィンの融点以下に冷やし、粒子がパラフィンに部分的に埋まった(マスクされた)状態でパラフィンを固化した。このときマスク面の広さはDDAB濃度で制御できる。この状態で露出部分をオクチルシランで表面処理し、疎水化した。これにより、両親媒性を持つサブmmオーダのシリカ粒子、即ち両親媒性粉体粒子を作成することができた。しかしこの手法は元々コロイド粒子に対し使われていたが、我々の粉体スケールの粒子では粒子ごとのマスクサイズのばらつきがかなり大きくなってしまった。これは重力による粒子の沈降により液滴内で構造の不均一が生じたことや、熱揺動によるアジテーションが粉体では効かないことなどが影響したものと考えられる。 このように、基本的な粒子作成に成功し、構造形成などの実験を行う準備ができたと言える。しかし両親媒性構造の制御は高精度であるとは言えず、作成手法の改善も必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも書いたように、研究実施計画で想定していた両親媒性粉体粒子の作成に成功した。よって粉体-液体混合系の構造形成や物性測定に取り組む準備ができたと言える。他方、作成された粒子表面の親水領域と疎水領域のサイズのばらつきが想定よりも大きい。そのため、作成手法の改善にも取り組む必要がある。 進捗がやや遅れた理由としては、前述のように粒子サイズによる影響があったことに加え、想定していた実験作業の時間を確保できなかったことが挙げられる。当該教員の実験室の割当が増えたことに伴い内装工事が必要となり、またそのために装置などの配置換えも必要となったため、年度末にかけて実験が滞った。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子作成:前述のように、両親媒性粉体粒子の作製はできたが、両親媒性構造の制御は不十分であった。そこでパラフィン液滴形成前の粒子の表面洗浄過程、ピッカリングエマルション液滴形成時のアジテーションなどの作成過程を検証し、粒子の両親媒性構造を精度良く制御することに取り組む。 両親媒性粉体粒子の構造形成:ウェットな粉体が形成する構造の解明に取り組む。まず作成した粉体粒子と少量の水を混合し、鉛直方向に加振することにより、多体的な粒子衝突によるランダム性の強いアジテートをかけて自己組織化させる。形成された構造を顕微鏡観察により調べ、粒子の親水/疎水面比や水の量に対する形成される構造の相図(状態図)を作成する。 物性の測定:構造形成後のウェットな粉体の物性は、親水面間の結合の量や結合構造のトポロジーなどにより大きく変化すると予想される。そこで形成された構造に対し、引っ張り試験機により応力-ひずみ曲線を測定し、降伏・破断応力などの力学物性の構造依存性を解明する。 他:自己組織化後の粉体に水などの液体を注いだ際の透水(透液)性や液状化現象、液体を加えた粉体を斜面などで流動させたときの構造やパターン形成など、ウェットな粉体を特徴づける基礎的な性質について調べる。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況にも書いたように、両親媒性粉体粒子の作成に想定よりも時間を費やしたこと、実験室の配置換えや内装工事のため想定していた実験作業の時間を確保できなかったことから、粒子を使用した構造形成や物性測定の実験を次年度に持ち越した。そのため、これらの実験に用いる費用も持ち越すこととなった。 またCOVID-19の感染拡大に伴い、参加予定の研究会が中止となったため、旅費など研究会のための費用が未使用となった。今後状況が落ち着き次第、本研究に関連する別の研究会に参加する予定である。
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