2019 Fiscal Year Research-status Report
Realization of Superfluidity in Adsorbed Molecular Films by Phonon Irradiation
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19K21856
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70251486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 亮輔 日本女子大学, 理学部, 准教授 (40433312)
永合 祐輔 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (50623435)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 物性物理 / 量子流体固体 / 超流動 / 低温物性 / フォノン / 非平衡 / 水素 / ヘリウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な原子分子の薄膜をフォノン照射で超流動化する方法を確立し、物理学の発展に資することを目的とする。研究代表者らが確立させたヘリウム薄膜の量子相転移機構に基づき、吸着分子薄膜をフォノン等の外場により励起させ、非平衡超流動の実現を目指す。具体的には分子薄膜が吸着した固体基板に100GHz-1THz程度の超高周波フォノンを伝播させ、薄膜を局在状態から空間的に拡がった励起状態に遷移させる。フォノンの生成には超伝導トンネル接合を利用する。 2019年度は、超伝導トンネル接合を開発し、これを用いたフォノン伝播検出装置の製作までを行った。Nb-AlOx-Nbトンネル素子を蒸着法により作成し、1Kまでの電流電圧特性測定を繰り返すことで、素子特性の改善を進めた。研究の過程で素子特性が酸化絶縁膜の作製条件に大きく依存することがわかり、基板加熱装置の導入を中心とした絶縁膜作成方法の改善を進めた。その結果、SISトンネル素子およびジョセフソン素子として、理論予測をほぼ満足する接合素子の作製に成功した。 更に、作成した素子によるフォノン生成と検出を行うため、シリコン単結晶中でのフォノン生成・伝播を検出するための実験装置の準備を行った。 2020年度は、超伝導トンネル接合素子によるフォノン生成を実験的に確認した後、分子薄膜にフォノン照射をする装置の開発を進める。これには多孔質ガラスの大表面積基板と、シリコンおよびサファイアの平坦基板を用い、接合素子をそれらに接着することでフォノン照射装置とする。これらの装置を開発し、まず超流動特性がわかっているヘリウム薄膜においてフォノン照射による超流動増強効果と非平衡超流動を探索し、更にこの実験を水素薄膜に対しても進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超伝導トンネル接合素子として広範な温度範囲で動作しかつ安定な特性が期待できるNb-AlOx-Nb接合の作成を試みてきたが、電流電圧特性が酸化絶縁膜の作製条件に大きく依存することが判明し、本研究期間の殆どを特性改善に費やしてきた。その結果、基板加熱装置の導入による酸化膜生成時の温度制御により、特性を大幅に改善させることに成功した。現在まで、100%ではないがAmbegaokar-Baratoffの理論に整合する特性の接合作成ノウハウを確立している。 2019年度は接合によるフォノン生成の確認までを目標としたが、装置製作まで行ったため、約90%の達成度であり、概ね順調に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トンネル接合素子によるフォノン生成の確認をまず行う。そのための基本的装置は既に準備済みである。フォノン生成を確認した後、多孔体もしくはシリコン基板上吸着薄膜に対するフォノン照射実験を進める。分子薄膜としてまずヘリウム4を用いて、フォノンによる非平衡超流動と超流動増強効果の探索を行う。その後、平衡状態で超流動を示さない水素薄膜での実験を試みる。
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Causes of Carryover |
フォノン生成検出装置がまだ予備的実験用装置作成で終了したことが、次年度使用額が生じた理由である。2020年度は、フォノン生成検出装置の基本部品と材料の購入費用、実験に必要な寒剤費、測定用ソフトウェア、分子薄膜生成用ガスハンドリングシステムの製作費用に、本研究費を使用する。
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Research Products
(4 results)