2019 Fiscal Year Research-status Report
Theory of complex molecular systems: effective model and quantum dynamics
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19K21860
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
妹尾 仁嗣 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30415054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
圓谷 貴夫 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (00619869)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | スピン転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分子が構成要素となる結晶における動的現象をターゲットとして、第一原理計算によるミクロなモデル構築と、その実時間シミュレーションを行い、複雑な分子系の量子ダイナミクスの理解を得ることである。 本年度は、まず分子性導体κ-(BEDT-TTF)2X系における反強磁性状態でのスピン輸送現象についての論文を発表した。また、そこでの重要な因子となるスピン依存の動的スペクトルを導出するため、数値計算コードを開発した。途中経過については学会発表を行い、現在計算シミュレーションを遂行中である。一方で光誘起ダイナミクス現象に関しては、以前行った1次元モデルをより現実的な2次元モデルに拡張し、実時間ダイナミクスを数値的にシミュレーションし、その結果について学会発表を行った。1次元モデルの際と同様に、電荷秩序にドメイン壁(キンク)が一つある初期状態に光を照射すると、共鳴モードにパルス光の周波数が近い場合に非一様性が現れ、空間的にドメイン壁位置を種として時間とともに非一様領域が広がっていくことが分かった。特に、光強度が大きいと、電荷秩序構造自体が消失した領域が時間とともに広がっていく「融解」現象が現れることを解明した。また複雑な分子系に対するミクロなモデル構築に向けた立ち上げとして、第一原理計算コードを研究代表者の計算機資源において遂行し、試行的計算を行った。分担者はこのようなモデル化を典型的な分子性導体であるα-(BEDT-TSF)2I3系に適用し、ワニエフィットによって質量のないディラック分散を再現することに成功し、論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、分子が構成要素となる結晶における第一原理計算によるミクロなモデル構築と、その実時間シミュレーションの両方に対して一定の進歩を得ることができ、また今後の萌芽的研究への土台作りも順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでの研究をそのまま継続して進展させていく。現在行っているκ-(BEDT-TTF)2X系における反強磁性状態の動的スペクトルに関しては結果をまとめて論文を執筆したい。2次元電荷秩序モデルに対する光ダイナミクスの計算を推し進め、2次元系の初期過程における量子ダイナミクスを明らかにしたい。有効モデル化も、随時複雑な分子性物質に適用し、さらに電子格子相互作用を含めた枠組み構築を目指していきたい。
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Causes of Carryover |
現在代表者の研究室に設置された共用計算機環境でシミュレーションをできる状況にあるため、計算機の購入を差し控えた。来年度以降、必要となった際に最新の計算機を購入する。また、今度成果発表が期待できるので、学会・国際会議への参加費や論文の執筆費がより必要となる。
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