2019 Fiscal Year Research-status Report
レーザーブレイクダウンを引き起こすラッキーな衝突に対する統計モデルの構築
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19K21871
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 進 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20356786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 上席研究員(定常) (10215709)
高橋 栄一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (90357369)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | レーザーブレイクダウン / 逆制動輻射 / 多光子吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザーブレイクダウンを引き起こす電子衝突電離に関与する電子は,バルクの平均的エネルギーを持つ電子ではなく,電離エネルギーを越える高エネルギーテールの電子である.理論およびシミュレーションモデルを用いてレーザー照射下での高エネルギーテール成分を持つ電子分布関数を決定することが,本研究の目的の一つである.しかし,モデルを検証するために実験的に電子分布関数を決定することは困難であるため,実験では分布関数から決定される電子なだれの増幅係数を指標にする. 実験的に電子なだれの増幅係数を正確に求めるためには,自然に存在する種電子数の影響を取り除く必要があると考え,今年度は理論モデルによる電子なだれの増幅係数の決定に先行して,ガスチャンバー内に設置した電極間にナノ秒YAGレーザーの光を集光する実験を行った. 電圧を電極間に印加することにより,電子を照射領域から印加電場によるドリフトで除去することで,電子なだれの増幅係数の絶対値評価を試みた.印加電圧を増加に従い,ブレイクダウンに必要となるレーザーエネルギーが増大,飽和する結果が得られた.このことより,実効的な電子増倍係数を印加電場によるドリフトで制御できることを示すとともに,電子なだれの増幅係数の正確な絶対値評価の可能性を示した.理論的には,レーザー照射下でのクーロン散乱による多光子光吸収,多光子放出過程を考慮した電子エネルギー分布関数が従うマスター方程式を導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度中に,理論的に導出したレーザー照射下でのクーロン散乱を考慮した電子が従うマスター方程式を数値的に解き,電子分布関数を求める予定にしていたが,プログラムが完成しておらず,電子分布関数の決定までには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
理論的に導出したレーザー照射下でのクーロン散乱を考慮した電子が従うマスター方程式を数値的に解くプログラムを完成し,電子分布関数を決定する.レーザー光と衝突により電子がエネルギーを交換する(損失は制動輻射,獲得は逆制動輻射)多光子過程の遷移確率を使ったモンテカルロ手法を導入したモデルを構築し,そのモデルに基づきシミュレーションを行い,既存の2体衝突モデルやLangevin手法などから求まる電子分布関数と比較する.特に,高エネルギーテールの違いに着目し,その発生機構を明らかにする.
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Causes of Carryover |
シミュレーションコード開発が遅れており,計算機使用料の支出が無くなったため.当初予定していた計算に大型計算機使用料に繰り越し,および個別計算機の購入に使用する予定である.
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