2019 Fiscal Year Research-status Report
ペニングトラップを用いたミューオン精密測定手法の開発
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19K21872
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
飯沼 裕美 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (60446515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 聡太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (10800485)
河村 成肇 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (60311338)
仁尾 真紀子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 上級研究員 (80283927)
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60242103)
西村 昇一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 博士研究員 (20836431)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ペニングトラップ / ミューオン / 磁気モーメントg因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミューオンやミューオニック原子の質量mや磁気モーメントの大きさを決めるg 因子をペニングトラップ実験によって世界最高精度で求めることを念頭に、ほぼ白紙からロケットスタートする。ミューオンを単独で電磁場内に捕獲するためのペニングトラップ装置の開発を行い、短寿命荷電粒子の精密計測の基礎実験技術を確立させることを目標にしている。 当初の計画では、一年目は理研を主体として、ダブルペニングトラップ実験装置の設計と製作を行い、陽子およびヘリウム原子核を用いてテストを行うことを計画していたが、ペニングトラップ後の粒子の状態を検出する方法が技術的に難しいと判明したため、計画の見直しを行うことにした。初年度は情報収集および、過去の超精密実験の関係者と意見交換を行うための国際シンポジウムを開催した。そこでは実験にかかる困難な点や、手法の見直しなど、さらに高精度での測定にむけて乗り越えるべき課題を明らかにし、その解決方法をまとめ2020年度に行う高電圧チェンバー詳細設計の基本方針を決定した。(国際シンポジウム名称 [New Developments of Muon Precision Physics]、開催日時 2019 Nov.27-28, KEK. URL https://kds.kek.jp/indico/event/32734/) 国際シンポジウムを通し、新たな研究協力者を得ると同時により具体的な研究方針を明らかにした。本研究予算で行う研究内容の役割とその先の大型科研費を取得して取り組む実験の全体像のイメージを研究チーム内で共有し、本研究予算で達成する物理的意義の再設定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度の当初計画では、ペニングトラップ装置:50cm 程度の卓上サイズの設計と製作および、トラップのための電極と検出回路を一から設計する予定であった。しかし、シミュレーション結果や、反陽子トラップの経験を元に、再検討をしたところ、トラップされたミューオンの検出信号強度が低いこと、目標精度に到達するにはトラップ装置を極低温まで冷却せねばならぬことが判明した。しかし、ミューオンは寿命があるため、極低温まで冷却する間に崩壊してしまうという問題点がある。よって、トラップ中のミューオンを検出する手法の見直しのため、GEANT4シミュレーションによる予想されるミューオン強度とトラップ数の再見積もりおよび、検出方法のアイデアを議論するため国際シンポジウムを開き、より海外からの研究者等との意見交換を行い、問題点の解決方法の検討を最優先に取り組んだ。2019年度末にある程度の方針が見えたものの、その後のコロナ渦によりKEK~理研~茨大の3拠点のいずれかの対面打ち合わせが厳しくなり、詳細を詰めている段階で止まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は、トラップチェンバーの設計を固めることを目標にする。具体的な設計作業としては、昨年度中の進めたGEANT4シミュレーションを大学院生等に展開し、より高統計のシミュレーションを行うことにより設計の確度を上げる。 昨年11月に開催した国際シンポジウムの呼応する形で知見をまとめ、データベース化を行う。又、2020年度後半、2021年度の見通しを立て直すため、コロナ渦のある程度収束を見込んで、対面打ち合わせ・ワークショップを開催する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、ペニングトラップ装置:50cm 程度の卓上サイズの設計と製作および、トラップのための電極と検出回路を一から設計する予定であったが、シミュレーション結果や、反陽子トラップの経験を元に、再検討をしたところ、トラップされたミューオンの検出信号強度が低いこと、目標精度に到達するにはトラップ装置を極低温まで冷却せねばならぬことが判明した。しかしながら、ミューオンは寿命があるため、極低温まで冷却する間に崩壊してしまうため極低温まで冷やす案は現実的ではない。それゆえ、トラップ中のミューオンを検出する手法の見直す必要が生じたため、2019年度使用額を国際シンポジウム費用に留め、物品購入を2020年度に持ち越すことにした。2019年度末~現在まではコロナ渦で理研、KEK茨大の3拠点の主研究者の対面打ち合わせが厳しかったが、今までに再検討を進めたGEANT4シミュレーションを茨大学生らに展開し、設計の確度向上につとめ、2020年度後半にはペニングトラップチェンバーの製造に取り組む。
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Research Products
(2 results)