2019 Fiscal Year Research-status Report
Verification of geometrical effect on macro-coherence amplification toward neutrino mass spectroscopy
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19K21878
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮本 祐樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (00559586)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ニュートリノ質量分光 / 三光子過程 / コヒーレンス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、振動実験による混合角の決定などニュートリノの性質は次々と解明されてきた。しかし「質量絶対値」や「質量タイプ(マヨナラ/ディラック)」といった未解決の問題が残っており、これらは標準理論をこえる物理を構築するための重要課題として、今なお世界中で盛んに研究が行われている。これらニュートリノ物理に残る課題を解決しうる手法として、原子を利用する「ニュートリノ質量分光」が提案されている。この手法では、励起された原子からニュートリノ対と光子が同時に放出される過程(光子随伴ニュートリノ対放出)を利用する。ニュートリノ質量分光ではこの光子随伴ニュートリノ対放出をコヒーレンス増幅によって増幅することで観測する。光子随伴ニュートリノ対放出は標準理論の枠内で存在が確実であるが、マクロコヒーレンス増幅が理論通りに機能するかは不明であった。本課題では光子随伴ニュートリノ対放出と同じキネマティクスを持つ三粒子放出過程(具体的には三光子放出過程)におけるコヒーレンス増幅の実現とその幾何学的効果の検証を目標としている。 本課題ではキセノン原子の準安定状態である3P2状態からの三光子放出過程を用いる。初年度では、この3P2状態に励起する手法とその占有率などの評価方法の開発を行った。励起手法としては基底状態からの二光子吸収による励起を用いた。また占有率の評価のために近赤外光を入射し、3P2状態から6p軌道励起状態へ遷移させ、そこからの発光を観測した。発光の観測自体は成功しており、その詳細については論文執筆中である。しかし励起光率は想定より低く、今後も改良が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の初年度では3P2状態への励起手法を確立を目標としていた。励起自体は達成しているが、その効率は想定より低く今後も改善が必要であるため、進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は3P2状態への励起効率の改善をまず行う。具体的には2光子吸収ではなく、3光子を使った過程を試す。その後に三光子放出過程の観測を試みる。三光子放出レートは小さいため、二本のレーザー光をトリガーとして入射し遷移を誘起する。励起状態のコヒーレンスが充分に大きければ、三光子遷移がコヒーレンスにより増幅され、放出された三番目の光子を検出することができる。信号強度は先行研究で行ってきた二光子放出よりも弱いが、光電子増倍管により充分検出可能と考えられる。まずは全てのレーザー光を同軸に入射し、三光子放出の観測を目指す。次に三光子放出の幾何学的効果を検証する。コヒーレンス増幅は関わる光子の全運動量が保存される方向に起こるため、入射するレーザー光の方向や波長によりその条件が変わる。シグナル強度のそれらへの依存性を測定することでコヒーレンス増幅の幾何学的効果を検証することが出来る。得られた結果と幾何学的効果を考慮したモデル計算を比較することで、三粒子放出過程のコヒーレンス増幅に関する理解を深める。
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Causes of Carryover |
当初、初年度に現有システムを発展させる形でのレーザー開発を予定していたが、予定通りに進まなかったため、次年度使用額が生じた。この差額は次年度に励起の高効率化のためのレーザー開発費用として使用する。
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