2019 Fiscal Year Research-status Report
負性電子親和力を利用した高密度ポジトロニウム生成のためのダイヤモンド表面制御
Project/Area Number |
19K21882
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田中 真伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00222117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上殿 明良 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20213374)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / BEC / Ps |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はダイヤモンドが持つ負性親和力、高熱伝導率、高耐放射線性能およびダイヤモンドの表面ターミネーション制御と3次元加工技術を使い、ポジトロニウムの生成量の増加及び生成時の温度を研究することを目的としている。 これにより我々は、先行実験で困難であったPsの熱冷却の実現可能性を探る。NEAを持つダイヤモンドを低温冷却することで電子のエネルギー分散を小さくし、協力会社によって開発されたダイヤモンドのマイクロストラクチャ構造を使用することで、形状を制御し表面積を大きくしPsの生成量を上げる。また次のステップとして表面ターミネーション原子分子と印可電場によって表面近傍のポテンシャルを制御し、トラップされた電子と加速器の陽電子からPsを生成し陽電子ビームのエネルギー分散程度にエネルギーの揃った低温ポジトロニウム生成を狙う。将来的にはダイヤモンドの優れた熱伝導率および耐放射線性能を用いて高強度陽電子ビーム下でのポジトロニウムの生成が推進できる。 このために次に述べるテーマを行なっている。(a) ダイヤモンド表面ターミネーションと解析、(b)触媒ダイヤモンド加工プロセス、(c)陽電子ビームを利用したポジトロニウム生成実験がそれである。(a)に関しては、産業総合技術研究所の研究者と連携し複数の表面ターミネーションを施したダイヤモンドを作り、研究分担者保有の実験装置でポジトロニウム生成量を測定し、予想通りターミネーションによって収集量が変化することを確認できた。(b)に関しては、現在マイクロストラクチャ構造を作るためのリソグラフィーの準備を行なっている所である。(c)に関しては、現在研究分担者保有の陽電子ビーム照射装置に白色レーザーを組みあわせた装置を開発した。これにより光により励起されたダイヤモンド表面近傍の電子と空孔型欠陥の相互作用を理解するための実験も行うことができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(a)に関しては、研究開始時にすでに保有していたダイヤモンド基板を使用し評価を開始した。我々は検出器に使用するための表面装飾に関してはノウハウを持っており、評価結果も十分であった。しかし他の表面装飾を独自に実行した所、結果にばらつきが出て信頼性のあるデータ取得が困難となった。このため産業総合技術研究所の研究者と連携し、彼らが保有するノウハウを生かして表面装飾を施した試料製作に成功した。スケジュールに三ヶ月程度の遅延が生じたが、現在研究分担者保有の実験装置で測定し、予想通りの結果を確認できた。 (b)に関しては、ダイヤモンド基板を国外より購入しており、装置故障や他の需要の増加等で納入に半年遅延が生じた。これにより本テーマで行う微細加工プロセスの開始が遅れた。さらに物質・材料研究機構保有の共用フォトリソ装置を使用してパターンを製作を進めていたが、COVID-19の影響で共用装置が使用停止になり、2019年度末では、共装置の共用再開を待っている。現在パターン等は完成しており共用が再開されればパターン作成を行った後に協力会社にて微細加工プロセスを進める予定である。 (c)に関しては、現在研究分担者保有の陽電子ビーム照射装置に白色レーザーを組みあわせた装置を開発した。これにより光により励起された表面近傍の電子と空孔型欠陥の相互作用を理解するための実験も行うことができるようになり装置開発は順調で、現在ポジトロニウム生成量に関する測定は順調に行える。しかしながら生成されたポジトロニウムのエネルギーの測定には、ポジトロンの強度と設置測定器等を再検討した結果、現存の装置改造を行うのではなく海外の研究所で測定を行う方が効率的であると判断し、2019年度後半に海外での実験を検討していた。種々の条件が揃い実験を開始する時にCOVID-19で帰国できなくなる可能性も考え実験を中止して現在に至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(a)に関しては、ポジトロニウム生成に関する評価関数を定義し、複数の試料について検出器のアクセプタンス、ポジトロンビームパラメータなどの装置固有のパラメータによらない比較ができるような検討を行う。また現在構築できている産業総合技術研究所の研究者との連携により、他の表面装飾とその影響について検討する。これらと(b),(c)の結果を合わせてポジトロニウムの生成量が予想できるモデルを構築する。 (b)に関しては、6月に入れば物質・材料研究機構保有の共用フォトリソ装置を使用してパターンを製作を開始できる見込みである。このパターン作成を行った後に協力会社にて微細加工プロセスを進め、加工後の表面状態の評価と表面積による生成量の増加等を定量的に評価する。(すでに加工前のデータは取得済みである。) (c)に関しては、ポジトロニウムの生成量に関しては、すでに構築した測定装置により表面状態も含めて実験を行う。また生成されたポジトロニウムのエネルギーの測定は、引き続き海外の研究所で測定を行う方向で調整する。並行して国内で評価できるかどうかも検討する。
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