2020 Fiscal Year Research-status Report
分子雲/原始惑星系/彗星で生成する核酸塩基構造異性体は生命の進化に寄与したか?
Project/Area Number |
19K21885
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川西 優喜 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70332963)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 核酸塩基 / プラズマ / テラヘルツ分光 / アストロバイオロジー / 超伝導検出素子 / 質量分析 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸と核酸塩基は共に生命に必須の生体高分子である。アミノ酸は、隕石でも地球の生物と同様のキラリティの偏りが検出されており、またその前駆体も分子雲・星形成領域で観測されていることから、宇宙起源の可能性についても広く議論されている。一方で核酸塩基については、隕石からも検出はされているものの、宇宙での生成過程は未解明となっている。核酸塩基には、リボ核酸(RNA)やデオキシリボ核酸(DNA)内のヌクレオチドを構成するアデニン(A)やグアニン(G)などのプリン塩基、シトシン(C)、チミン(T)などのピリミジン塩基が存在する。本研究では、比較的温度の高い原始惑星系円盤や彗星などの環境を想定したプラズマ放電により、生成される核酸塩基を含めた生体高分子の形成過程を探るため、ダストプラズマのミリ/テラヘルツ分光診断システムを開発し、計測のアルゴリズムも改良して、ラジカルを含めた微量分子のスペクトルの検出に成功した。また、形成過程を探索するため、ポテンシャルの非調和下方歪みを利用した超球面探索法SHS・非調和歪追跡法ADDFを実装した量子化学計算を実施した。さらに、形成された特殊な高分子の生命・環境への影響を調べるため、サルモネラ菌や大腸菌などの原核細胞/嫌気性生物や、真核生物/好気性生物のin vitroの動物培養細胞生物等を用いたDNAの損傷に伴う姉妹染色分体交換による染色体異常の観察やAMES試験などの突然変異原性試験を行い、実験条件を明らかにするとともに手法を確立した。また分光計測のためのTHzヘテロダイン分光素子の製作環境をクリーンルームに立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度はCODIV19による物資や薬品の入手が困難となったほか、大阪における緊急事態宣言等の影響により、実験の遅れが生じた。加えて2020年度はプラズマ装置の屋外冷却チラーや大排気容量のドライポンプが故障し、代替製品の導入と電子制御システムとのインターフェースの整合などの修復・対策に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
プラズマ装置の冷却チラーと、大排気容量のドライポンプの修復を2020年度末に完了した。現在、プラズマ診断計測の自動制御のアルゴリズムを更新しており、これを用いて有機分子の合成を再開し、分光計測と、質量分析による分子同定、微生物・動物性細胞による突然変異試験を進める。また、量子化学計算により、プラズマガスによる反応ルートの候補の調査を実施する。
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Causes of Carryover |
CODIV19の影響と装置の破損/故障による実験の遅れのため。翌年度に、有機分子の合成や生物実験を再開するための材料費や成果発表に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)