2020 Fiscal Year Research-status Report
氷と非晶質ケイ酸塩の光化学反応による低温での含水ケイ酸塩生成
Project/Area Number |
19K21887
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
香内 晃 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60161866)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 非晶質ケイ酸塩 / 氷 / 紫外線照射 / 含水ケイ酸塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
低温の星間分子雲から原始太陽系外縁部には,非晶質ケイ酸塩を核としそれを氷(H2Oが主成分で他に,CO, NH3等が不純物として含まれている)が覆っている微粒子が存在する.この氷には常に紫外線が照射されて分子の分解が起こっている.たとえば,H2O + UV → OH + H.このOHはラジカル(遊離基)であり,不対電子を持っているので非常に反応性が高い.光分解で生成されるOHラジカルは非常に大きなエネルギーを持っている(24 kJ/mol = 3,000 K).いっぽう,非晶質ケイ酸塩と水蒸気との反応の活性化エネルギーは,20 kJ/molと推定されている.したがって,OHラジカルは,10~150K程度の低温でも,非晶質ケイ酸塩と反応して含水ケイ酸塩を作る可能性がある.本研究計画では,これを実験的に調べ,宇宙での含水ケイ酸塩生成の描像を抜本的に見直す.これまで氷とケイ酸塩の相互作用の研究は全くなく,非常に新規性の高い研究計画である.この結果は,地球型惑星の水の起源に関する議論に極めて大きな影響を与えるだろう.
本年度は,彗星塵に含まれるGEMs類似組成の非晶質ケイ酸塩の超微粒子を熱プラズマ法で作製した.透過型電子顕微鏡用の非晶質Si薄膜上に,GEMs類似非晶質ケイ酸塩超微粒子をのせ,それを80Kに冷却し,その上に氷を蒸着した.それに重水素ランプからの紫外線を照射し,非晶質ケイ酸塩超微粒子の構造変化を観察した.GEMs類似試料に本来含まれている超微細結晶に由来する多くの回折斑点があるため,結果を断じることは早計であるが,今の所,GEMs類似組成の非晶質ケイ酸塩では顕著な変化は観察されていない.さらに,2種類の非晶質ケイ酸塩薄膜試料(Mg2SiO4,MgSiO3)を電子顕微鏡観察用の非晶質Si薄膜と赤外線観察用のAl基板上にスパッタリング法で作製した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,1年目はMg2SiO4,MgSiO3微粒子の試料作製を,2年目にそれらの透過電子顕微鏡観察を計画していた.しかし,1年目にそれらの研究を実行し,2年目である本年度はさらに,GEMs類似微粒子試料の作製・観察,さらにMg2SiO4,MgSiO3薄膜の作製まで行うことができた.従って,当初の計画以上に順調に研究が進行していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
熱プラズマ法で作製したGEMs類似非晶質ケイ酸塩の超微粒子を用いた研究を10Kおよび80Kで引き続きおこなう.さらに,スパッタリング法で作製した試料を用いて,これまでと同様な方法で透過型電子顕微鏡を用いた研究を推進する.また,Al基板上にスパッタリング法で作製した薄膜試料を用いて,赤外分光法による研究もおこなう.これまでの研究で見出したアモルファスMg2SiO4の結晶化のメカニズムを探求する.これらの結果をもとに,アモルファス珪酸塩と氷の光化学反応に関する概要並びに地球の水の起源に関する議論を展開する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス禍による諸々の制限により,国内学会,国際学会への参加ができず,旅費を使用することができなかった.状況が許せば,本年度は旅費として使用したいが,それが叶わない場合,物品費として使用する.
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Precometary organic matter : A hidden reservoir of water inside the snow line2020
Author(s)
Nakano H., Hirakawa N. , Matsubara Y., Yamashita S., Okuchi T., Asahina K., Tanaka R., Suzuki N., Naraoka H., Takano Y., Tachibana S., Hama T., Oba Y., Kimura Y., Watanabe N., Kouchi A.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 10
Pages: 7755(13pp)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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