2019 Fiscal Year Research-status Report
有機化合物の安定同位体比分析法:誘導体化に伴う同位体比改変を無力化する技術の開発
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19K21888
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 誘導体化 / 有機化合物 / 安定同位体比 / 同位体分別 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物の安定同位体比(13C/12C,15N/14N等)の解析は,大気・陸・海洋と生物の間でおこる物質(もしくはエネルギー)収支,それらへの人間活動の影響評価,海洋や生物を介した二酸化炭素の吸収量の評価などの研究を行うための主要な科学ツールのひとつである。そこで,本研究では,この「有機化合物の安定同位体比」の測定における長年の課題であった「誘導体化(化学修飾)に伴う同位体比の人為的改変」を克服する新たな手法の開発にチャレンジする。 具体的には,(1) 誘導体化における同位体比の改変の仕組みの把握,(2) 同位体比の改変を軽減,希釈する手法の導入:(2-1) 界面活性剤を用いた同位体比改変の軽減,(2-2) 誘導体基の交換反応を用いた同位体比改変の希釈,(3) 実証研究,の3つの達成目標を設定し,研究を実施する。 令和元年度は,(1)に関して,糖やアミノ酸の代表的な誘導体化である「アシル化」に注目し,基質,誘導体化剤,生成物の間の濃度バランスと同位体比の関係を,実験的に明らかにした。また,(2-1)に関して,界面活性剤を用いた同位体比改変の軽減に挑戦し,実際に,ナノフルオロ吉草酸(Nonafluoropentanoic Acid)を添加して行ったアミノ酸のアシル化で,同位体比の改変が劇的に軽減されることを明らかにした。また,(3)の実証研究で用いる試料として,コントロール下での生物(魚・サンゴ等)の飼育を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,令和元年度に,上記「研究実績の概要」項の(1)と(2-1)の実施を計画しており,実際に,アミノ酸・糖のアシル化における同位体比の変化を明らかにし,また,ナノフルオロ吉草酸(Nonafluoropentanoic Acid)とともに行ったアミノ酸のアシル化で,同位体比の改変が劇的に軽減されることを明らかにした。これは,当初の計画通りの成果である。このように,本研究は,「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,達成目標 (2-2)誘導体基の交換反応を用いた同位体比改変の希釈,(3) 実証研究に取り組む。 令和元年度に実施した,界面活性剤の利用は,極性の有機化合物(アミノ酸・糖など)を溶液中で均一に混合し(=水素結合等による立体配置・配列の固定を解除する),同位体比改変の原因である「競争反応」を緩和することが目的であった。一方で,交換反応の利用は,誘導体化により改変してしまった同位体比を多量の交換剤で希釈し,その影響を最小化することを目的としている。この2つの方法のどちらか,もしくは,組み合わせにより,「誘導体化(化学修飾)に伴う同位体比の人為的改変」を克服する新たな手法を完成させたいと考えている。 また同時に,昨年開発した「界面活性剤の利用」と,本年度に開発する「交換反応を用いた同位体比改変の希釈」を,代表的なモデルケースとして,(1) 実験室で飼育した生物(実験区と対象区の比較試料など)に適用し,本研究が提案する方法論の有効性を実証する予定である。
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Research Products
(4 results)