2022 Fiscal Year Research-status Report
沈み込み水循環の新パラダイム:unbendingによるアセノスフェアからの上昇流
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19K21892
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川勝 均 東京大学, 地震研究所, 名誉教授 (60242153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
悪原 岳 東京大学, 地震研究所, 助教 (30802954)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 沈み込み / スラブ / 地球内部水循環 / 海底地震観測 / レシーバー関数 / 地震波トモグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,沈み込み帯における水循環に関して,多様な「地球内部流体の移動」の可能性を観測データから解明し,地球内部物質循環研究における新たな展開を目指すものである.具体的には,沈み込む「スラブ下」のアセノスフェアからの水が上昇する経路があり,プレート上面や,大地震が起こるプレート境界へ水を供給している可能性を地震観測データから検証することを目指す.またその原因は,メカニカルな起源を持つプレート沈み込みプロセスunbendingと関連している可能性を解明する. スラブのunbendingが起こる領域は,沈み込み帯の海溝軸から陸域までの間の海底下の領域である.従って本研究の目的を果たすためには,海底地震計のデータを使い構造解析をすることが必須となる.本研究では,大学の海底地震観測グループおよびケーブル海底地震観測網S-netのデータを,豊富かつ高質な陸上データと併せて解析し,東北沈み込み帯前弧下等の地殻・マントル構造とその動態を明らかにすることを目標とする. 第四年度の2022年度は,これまでに収集した海陸観測網の波形データを使い以下の研究を継続的に進めた.(1)これまでの研究から明らかとなった,海洋下におけるレシーバー関数解析や有限周波数走時トモグラフィー解析において顕著な障害となる海洋堆積層の構造を決定する手法開発を行う,(2)波形から走時を読み取り,有限周波数走時トモグラフィー解析を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は概ね順調に進んでいるが,コロナ禍ということもあり,情報交換や研究の展開に時間がかかる傾向がある.またレシーバー関数解析においては,海底堆積層の影響除去が大きな課題となり,海底地震計波形データから堆積層構造を決定する手法開発を行い,成果の論文化をすすめている.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長が認められた2023年度は,開発が終わった海底堆積層構造の決定手法およびトモグラフィー解析の成果をそれぞれまとめ,論文化することを目指す.また成果の一部を日本地球惑星科学連合大会2023等で発表する.さらに,得られた結果を統合し研究の総括を行う.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で,旅費などの研究費が実質的に使用されていない状況にある.無理のない範囲で海外の学会等で成果発表を行う.
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