2019 Fiscal Year Research-status Report
高時間解像度編年研究を加速する高精度超微量放射性炭素年代測定の開発
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19K21894
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 放射性炭素 / 年代測定 / 微量分析 / 高精度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、加速器質量分析計(AMS)による14C年代測定で用いられる試料量を、既存の千分の一で分析可能とする超微量年代測定法の確立を目的としており、50-1μg炭素量の高精度14C年代測定を実用化することで、あらゆる地球科学試料を測定対象とすることを目標とする。超微量分析法の確立には、既存の微量分析を凌駕する安定性と長時間測定を可能とするAMS測定物質セメンタイトを分析試料から高品質に合成する必要がある。検討すべき主な合成反応の条件は、反応気体の混合割合、反応温度や時間、還元鉄の化学状態であり、研究代表者が既に達成した100-50μg炭素量の微量試料調整法を踏襲して条件の最適化を行なった。具体的には、超微量試料の合成反応を可能とする反応容器の改良、超微量反応に最適化した反応炉の製作が主となる。また、超微量測定におけるAMS測定条件の最適化も並行して実施し、既存の微量測定よりも少ない試料量でも比較的安定した測定を実現するための条件検証と基礎データの収集の試験測定を行なった。加えて、地球科学試料への実用化に向けた堆積物試料を収集し、超微量分析のための応用実験準備を進めた。 今後、超微量系においても高い収率でセメンタイト合成を可能とする反応条件の検証を行い、XRDやSEMを用いた化学組織や微細構造の観察から最適条件の最終評価を行う。最終評価が完了後、速やかに、基礎データ収集と応用試験に移行する予定である。研究成果の公開については、COVID-19の影響から関連学会が延期になった関係上、事態が収束してからの発表を目指し、国際専門雑誌へ論文投稿の準備を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究計画では、超微量反応系確立と基礎データの収集が主な内容であった。反応系の確立に必要とされる反応容器や反応炉を新たに設計・製作し、超微量測定にむけた実験環境を整えることができた。反応容器には、高精度、高密閉性でかつ超小型のバルブが必須でありその製作に想定よりも時間を要したため、年度内の合成反応の最適化までを達成することができなかった。2019から2020年度にかけてCOVID-19による活動自粛により実験に遅れが生じているが、すでに反応系の確立は終了しているため、活動再開より速やかに合成反応最適化の追い込みを実施する。 一方、超微量測定を見通してのAMS測定条件の検証を並行し、既存の測定条件の調整から、通常の微量測定よりも少ない試料量でも比較的安定した測定を実現でき、基礎データの蓄積を行った。超微量試料の合成反応最適化が完了したのち超微量測定の実測定へ移行する。超微量分析の応用事例として分析する予定の地球科学試料としては、福井県水月湖湖底堆積物関連を中心に試料収集を行っており、分析法が確立した時点で速やかに検証実験へ移行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、超微量系においても高い収率でセメンタイト合成を可能とする反応条件の検証を行い、XRDやSEMを用いた化学組織や微細構造の観察から最適条件の最終評価を行う。最終評価が完了後、速やかに、基礎データ収集と応用試験に移行する予定である。研究成果の公開については、COVID-19の影響から関連学会が延期になった関係上、事態が収束してからの発表を目指し、国際専門雑誌へ論文投稿の準備を進める。
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Causes of Carryover |
研究遂行に必要となった化学合成系の構築において、特に精度と密閉性の高い超小型バルブの製作に時間を要したこと、また、バルブ完成後にCOVID-19の影響を受けてしまったことから、当初予定の研究進捗よりも遅延が生じ次年度使用額が生じてしまった。本研究で採用するバルブは一般に市販されていない特注の受注物品であるが、すでに調達は完了し、実験を再開できる段階にあることから、COVID-19による研究施設の制限が緩和され次第速やかに、遅延していた実験およびそれに際して必要となる経費を支出する予定である。
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Research Products
(3 results)