2022 Fiscal Year Research-status Report
高時間解像度編年研究を加速する高精度超微量放射性炭素年代測定の開発
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19K21894
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 放射性炭素 / 年代測定 / 微量分析 / 高精度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、14C年代測定で用いられるサンプル量を既存の千分の一にする、超微量年代測定法の確立をゴールとする。 50-1μg 炭素量という超微量サンプルがカジュアルにあつかえるようになれば、地球科学サンプルの実質すべてが測定対象となるため、年代測定の応用範囲は飛躍的に拡大することになる。 超微量分析法の確立には、既存の微量分析を凌駕する14C測定の安定性と、長時間測定を可能とするAMS測定物質セメンタイトを高品質に合成が必要になる。検討すべき合成反応の主な条件は、反応気体の混合割合、反応温度や時間、還元鉄の化学状態であり、研究代表者が既に達成した100-50μg炭素量の微量試料調整法を踏襲して条件の最適化を行なった。具体的な取り組みには、超微量試料の合成反応を可能とする反応容器の改良、超微量反応に最適化した反応炉の製作にフォーカスし、およそ20μg炭素量までのサンプルにおいては安定的に試料を調製することができるシステムが構築できた。これと並行し、AMS測定における条件検討もおこない、標準物質などを用いて、安定測定を実現するための最適条件の検証もおこなった。 地球科学サンプルへの実用化に向けた取り組みでは、堆積物サンプルからじっさいに抽出した花粉など超微量サンプルに応用し、既存のサンプルサイズである 1mg炭素と同様の精確さで年代測定が可能であることが確認できた。20μg炭素量のサンプルが年代測定できることで、たとえば水月湖湖底堆積物の場合、これまで20-30年分解能で測定されていた堆積物サンプルをおよそ2-3年分解能で分析できることを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19に端を発する世界的な半導体不足や物流の停滞により、当初予定していたよりもシステムの構築が遅れ、研究進捗に遅れが生じてしまったが、2022年度から状況が徐々に改善され、本年度までに目的としていた超微量測定のための実験フロー確立と標準物質を用いた測定評価までを完了させることができた。 測定試料量を、50μg炭素量から20μg炭素量まで段階的に減らし、現代炭素や枯渇炭素の標準物質の14C測定を実施したところ、測定誤差は1mg炭素量を用いた通常測定の1.5-2.0倍程度の範囲におさまり、バックグランドは過去4万年を定量できるレベルを維持できた。本研究により、少なくとも20μg炭素量の年代測定は実用化が可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
超微量測定の検証までが完了したため、今後は、超微量測定を得意とする海外の研究機関と比較検証実験を行い、これまでの研究結果を集成し、専門学術雑誌に論文を投稿する。なお、本研究成果は、大森の所属機関である東京大学総合研究博物館放射性炭素年代測定室が行う年代測定の共同利用においても、2023年度から順次活用を進めてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19に端を発する世界的な半導体不足や物流の停滞により、当初予定していたよりもシステムの構築が遅れ、研究進捗に遅れが生じてしまったが、2022年度から状況が徐々に改善され、本年度までに目的としていた超微量測定のための実験フロー確立と標準物質を用いた測定評価までを完了させることができたが、予定していた海外での技術検証は渡航のタイミングに遅れが生じ、次年度に持ち越した。
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Research Products
(4 results)