2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ多結晶ダイヤモンドの大型化とマントル最下部に至る圧力発生技術開発への利用
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19K21901
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
國本 健広 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (20543169)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ多結晶ダイヤモンド / 硬質材料 / マルチアンビル装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は近年開発された硬質材料であり研究材料や試料として幅広く使用されているだけではなく最近では工業的にも利用されている。しかしNPDの合成条件は15-25 GPa、1900-2300℃と工業的に生産される硬質材料としては非常に高く、これは生産自体の難しさとともに合成後の試料のサイズに強い制約を与える。そこで本研究では出発試料やセル構成の再検討を行い、合成条件の低圧低温化を進めた。 試料には通常のグラファイトの他にGCやCnH2n+2を採用した。合成は愛媛大学に設置された川井式マルチアンビル装置(KMA)を用い、条件は5-25 GPa、500-2400℃の間で行った。合成した試料はX線回折装置を用いて試料の同定を行い、透過型電子顕微鏡およびシェラーの式を用いて粒径を求めた。 本結果の中で回収試料がダイヤモンド単相からなり、かつ最も低圧低温で合成されたのはCnH2n+2を用い10 GPa、900-1000℃において実施した場合であった。通常のNPDの粒径は約50-200 nm程度であるが、本条件で合成された試料の粒径は<10 nmと非常に細粒であった。粒径は材料の硬度に大きな影響を与えるため、本研究で得られた試料は従来のNPDよりも高い硬度を持つ可能性がある。 さらに本研究ではNPD合成条件の簡易化とともに一般的に合成されたNPDのKMAへの応用を並行して進めており、これまでに最大90 GPa程度の圧力発生に成功している。この圧力発生効率は従来の効率を約50%上回る。しかしNPDアンビルのサイズ的な制約から最大荷重は約3 MNに限られた。本研究で達成されたNPD合成の低圧低温下はNPDのさらなる大型化と生産性の向上につながる。そのため本結果をNPD合成の大型化に採用することができれば供給可能な荷重の増加が可能となり、圧力発生上限の拡大につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は大きく分けて(1)ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)合成の簡略化と(2)その高圧発生装置への応用である。前年度において目的1については従来の手法と比べて飛躍的に容易にNPDを合成することに成功した。昨年度において合成のために必要な圧力温度条件を従来の手法では15-25 GPa, 1900-2300℃程度必要であったが、本研究によって10-12 GPa, 900-1000℃と飛躍的に軽減することに成功している。しかしながら合成の難易度を下げることには成功したものの、現在までに従来のNPDと比較した場合の、硬度や摩耗性などの品質についてはまだ評価することができておらず、今年度はこれらの物性の評価を実施することを目指す。 次に目的2については当初設定していた、大型の高圧発生装置を用いいて地球の核―マントル境界に相当する圧力発生(125-135 GPa)という目標をを大きく上回る最大150 GPaを超える圧力発生に達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はNPD合成技術の大幅な簡易化に成功するとともにNPDをアンビルとして用いた高圧発生技術の開発によって従来不可能であった地球の核―マントル境界に相当する圧力発生に成功した。 今年度は本手法で合成したNPDの、硬度を含めた物性測定を行い、従来のNPDとの差異を明確化するとともに、その大型化を目指す。 また、昨年度と同様に合成したNPDのマルチアンビル装置を用いた高圧発生への応用を進め、地球のマントル最下部条件での鉱物の高温高圧相転移の観察の実現を目指す。特に、代表的なマントル鉱物であるブリッジマナイトは地球のマントル最下部付近でポストブリッジマナイトへと相転移することが知られているが、これを大型の高圧発生装置で再確認することは本研究の主題でもある。昨年度までに圧力発生については達成できたため、今年度より、あらかじめ合成したブリッジマナイトを試料としてその高圧相転移の観察と相境界の決定を目指し、これまでにダイヤモンドアンビル装置を用いて決定された結果との比較を行う。
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Causes of Carryover |
本課題で使用予定の物品の多くを占める高圧アンビルの破損が当初予定していたよりも少なかったため。またダイヤモンドアンビルは当初、実験ごとに破損することが予想されたためその研磨費用を多く計上していた。しかし実際に実験に使用した場合は予想に反して無傷で回収される場合も多く、その分の研磨費用を節約することができた。
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[Journal Article] Synthesis of nano-polycrystalline diamond from glassy carbon at pressures up to 25 GPa2019
Author(s)
Irifune, T., Ueda, C., Ohshita, S., Ohfuji, H., Kunimoto, T. and Shinmei, T.
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Journal Title
High Pressure Research
Volume: 40
Pages: 96-106
DOI
Peer Reviewed
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