2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Iron Manufacture Process Assisted by Electron-Beam Excitation from Moon Surface Regolith for Structural Materials
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19K21904
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
三井 正 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (90343863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 信博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (00370312)
竹口 雅樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, ステーション長 (30354327)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 月面レゴリス / 月資源 / 製鉄 / 電子線励起 / 熱分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、月面に建設する観測基地の構造材料(薄膜太陽電池パネルの支柱)用の鋼材を生産するために、月面を覆う砂(レゴリス)を電子線励起の援用により熱分解温度を抑制した(~600℃)直接熱分解法で還元して、真空3Dプリンタ用の純鉄粉を得るための技術開発を行うことである。具体的には、人工的に作製した模擬月面レゴリスから、鉄鋼材料を得る基礎技術の開発・確立を行うことを目的とする。 令和元年度は、研究の中核となる装置の立ち上げを行った。太陽炉を模した加熱炉中に溶融石英ガラス管を設置し、本研究の設備備品費で導入したターボ分子ポンプ(TMP)と高電圧印加装置(小型誘電コイル)を用いて、真空にしたガラス管内で陰極側より電子線を放射させ、人工的に作製した模擬月面レゴリスを圧縮して作製した試料ペレットに照射するシステムを開発し、動作試験を行った。 計画当初は実験を行うための加熱炉として、所属組織が所有する既存の熱処理用マッフル炉を用い、上部の試料導入ポートから試料ペレットを吊り下げ方式で保持する計画であったが、電極の設置スペースとの関係から標準サイズの試料ペレットが導入できないことが判明した。そこで、当機構の別地区に遊休設備として保管されていた管状加熱炉の譲渡を受け、側方から試料を導入する方式に設計の変更を行った。これにより、粉末X線回折装置(XRD)を用いて分析する際に必要な試料ペレットの標準的なサイズ(直径7mm)、またはそれ以上の大きさの試料に対しても真空中で加熱しながら電子線を照射できるようになった。この大きさであれば、将来、連続プロセスを用いて月面で製鉄を行う際に想定している加熱炉と同じスケールであり、より実用に即した状態で実験ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、研究の中核となる装置の立ち上げを行った。本研究の設備備品費で導入したターボ分子ポンプ(TMP)と高電圧印加装置(小型誘電コイル)を用いて管状加熱炉に設置した溶融石英ガラス管の内部を真空にした上で、内部に導入したアルミナ試料ボート(長さ約100 mm)上にタングステン製の電極を配置し、試料ペレットに電子線を照射する装置を開発した。試料の直径は約7mmであり、それ以上の大きさの試料にも対応可能である。電子線励起アシスト還元プロセスの際に、試料ペレットから落下した試料についてもアルミナ試料ボートで回収できるようになっている。この大きさであれば、将来、連続プロセスを用いて月面で製鉄を行う際に想定している加熱炉と同じスケールであり、より実用に即した状態で実験ができるようになった。 模擬月面レゴリス試料として最終的には「FeO : SiO2 = 15% : 85%」の組成を持つ試料による実験を予定しているが、本年度は電子線励起アシスト還元プロセスの現象の理解と検証を行うために「Fe3O4 : SiO2 = 50% : 50%」(体積比)の組成で実験を行った。これは反応中の電子顕微鏡によるその場観察などを行う上で現象の理解が容易なためである。FeO(ウスタイト)に替えてFe3O4(マグネタイト)を用いたのは、大気がある地球上において化学的に安定で、初期段階の実験では取り扱いが容易なためである。なお、計画当初は、試料粉末を混合したあと少量の水を加えて焼き固めて試料ペレットを作製する予定であったが、十分強力な小型油圧プレス機が入手でき、また、作製条件を最適化することで、試料粉末から直接、試料ペレットを作製することができるようになり、実験の効率が飛躍的に向上した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に確立した実験装置及び試料作製法を用いて、令和二年度は、[1]反応温度、[2]電流密度、等のパラメータを変えて実験を行い、電子線励起アシスト還元プロセスの詳細について調べる。さらに、[3]Fe3O4とSiO2の組成比の違い、[4]他の各種酸化鉄(Fe2O3、ヘマタイト)や、実際の月面レゴリスに少なくない比率で含まれる[5]各種酸化物(TiO2、Al2O3、MgO、CaO、Na2O)の影響についても明らかにし、体系的な理解を目指す。 なお、令和二年度2月に発生した新型コロナウイルス感染症の影響で、3月31日現在、海外への渡航については全く見通せない状況である。そのため、外国旅費として想定していた米国材料学会(Materials Research Society)での成果発表については取りやめる予定である。国内の学会(応用物理学会、日本金属学会)についても中止が相次いでいるため、学会発表については、新型コロナウイルス感染症が収束するのを待ってから、再度検討する。 旅費として計上していた予算については成果発表費用として、英文校正料と論文投稿料として執行する予定である。
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Causes of Carryover |
【理由】次年度使用額が生じた主な理由は、旅費が十分に執行されなかったためである。これは令和二年度2月に発生した新型コロナウイルス感染症の影響で、令和二年3月期の国内の学会の春季講演会がすべて中止となってしまい、研究代表者1名と研究分担者2名の国内旅費が執行されなかったためである。 【使用計画】令和二年3月31日現在、海外への渡航については全く見通せない状況であり、さらに国内の学会についても中止が相次いでいる。そのため、次年度使用額を当初計画で予定していた成果発表の経費として、国内外で学会発表を行うための旅費として使用することは困難な状況である。そこで、次年度使用額については成果発表費用として、英文校正料と論文投稿料として執行する予定である。学会発表については、新型コロナウイルス感染症が収束するのを待ってから、再度検討する。
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