2019 Fiscal Year Research-status Report
極限環境の地球-電気-生命相互作用の再現:二重構造式高温高圧電気化学反応槽の開発
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19K21906
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 正浩 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 研究員 (60435849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鹿島 裕之 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), ポストドクトラル研究員 (70780914)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 電気化学 / 極限環境 / 高温高圧 / リアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
地球-生命相互作用の真の理解のためには深海・地殻内に代表される高圧・高温のような極限環境における地球化学・生化学反応の観察が必須である。近年、環境から発生する電気による電気化学的な反応の関与が示されており、高温・高圧下で電気化学を行える実験系の構築が求められている。高温高圧電気化学装置は既に一部の工学分野で利用されているが、複雑な反応系に対応できていない。本研究では、深海研究で培ってきた高温高圧実験技術を応用して二重構造式の新たな仕様の高温高圧電気化学リアクターの開発に挑戦し、既存の実験系では観察できなかった極限環境における様々な地球化学・生化学反応と電気化学反応の融合の再現と観察を目指している。そこで本研究では、極限環境における地球-電気-生命相互作用を実験室で再現するために、高温・高圧下で様々な電気化学反応を起こすことのできる電気化学リアクターを開発することを目的とした。 2019年度において実施したこととして、大別して2つの種類の電気化学リアクターの設計と製造を行なった。ひとつは二重構造式のリアクターで電気化学セルを耐圧容器の中に閉じ込める構造を有する。耐圧容器内部の液体の圧力を高くすることで高圧条件での電気化学実験を行うことが可能となる。耐圧容器については内部の様子が観察可能なアクリル樹脂製のものと、より高温高圧な条件に耐えられるステンレス製のものを作成した。外部とは耐圧コネクタを介することで導通を確保した。また、もう一つ作成したものとして液体二酸化炭素リアクター用の電気化学実験仕様の部品が挙げられる。液体二酸化炭素リアクター内部に電極を挿入できるようになったことで、液体二酸化炭素を電解液または基質に用いた電気化学実験を行えるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リアクターの試作機の設計と作成までは順調に実施できた。作成した試作機を用いて電気化学反応の観察を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により計画を一時中止・延期したため実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したリアクター試作機を用いて電気化学反応の観察を行う。本リアクターで応用する極限環境電気化学反応は、地球-電気-生命の相互作用に絞り特に以下のものを主要な標的とする。(1) 炭酸固定反応:深海熱水域の二酸化炭素は気体・重炭酸イオン・液体・超臨界・ハイドレート等の状態変化が温度・圧力の小さな変化で容易に起こる。本リアクターでは、二酸化炭素ガスを容器内に圧入しながらの圧力と温度の制御が可能なため、基質である二酸化炭素の種々の状態に応じた電気化学反応が可能で、現場条件での炭酸固定反応の実態を観察できる。 (2) 気相固相相互作用:気体の密度は圧力に比例するため、気体を基質に用いた電気化学反応の高圧の効果は絶大である。本リアクターを用いて、深海底や地中などで実際に生じると考えられる鉱物と気体間の電気化学反応を再現する。 (3) 鉱物反応:自然界では硫化鉱物などが電極として機能することが知られているが、高温高圧と電気の両方の作用によってどのような反応が進行するかは未知であるため、これを観察する。 (4) 微生物反応:微生物の本格的な高温高圧電気化学培養の例は知られていない。本研究で世界に先駆けて培養を行うことで、高温・高圧電気生命圏の発見と機構解明を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大の影響により学会参加等の出張がキャンセルされたために旅費や学会参加費に相当する額が未使用になった。未使用分は翌年度分の助成金と合わせて、試薬や部品を購入するための物品費、学会参加のための旅費、実験を担当するスタッフの人件費として使用する計画である。
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