2020 Fiscal Year Research-status Report
グリーントライボロジーのための高性能な有機摩擦調整剤の創製
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19K21915
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
張 賀東 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (80345925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 眞幸 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (10362295)
三矢 保永 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 上席研究員 (10200065)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | グリーントライボロジー / 境界潤滑 / 有機摩擦調整剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球環境と調和した持続可能な社会の実現には,摩擦によるエネルギー損失を低減でき,かつ環境にやさしい潤滑技術の確立が重要な課題である.摩擦低減の方法として,低粘度の潤滑油に有機摩擦調整剤(OFM)などを添加する方法が用いられてきた.しかし,現用のOFMは,摩擦低減効果が不十分な上に,環境負荷が高い硫黄やリンを含むものもあり,最適化の余地が大きい.本研究では,OFMの従来の分子構造を刷新すべく,設計指針の探索・確立とともに,これまでに類例のない有機ラジカルを基盤とした高性能環境調和型OFMの創製に挑戦する.本年度は,主として以下を実施した. ・前年度に設計・合成したOFMのうち,摩擦・摩耗低減効果が最も高いC12TEMPOについて,潤滑性能と分子構造の関係を解明するために,末端の酸素ラジカルもしくはアミド基を変えた分子を設計・合成した.また,摩擦低減効果が一層高いOFMを創製するために,TEMPOに二本のアルキル鎖を装着した分子なども設計・合成した. ・新規に設計・合成したOFMを潤滑油に添加して,ピンオンディスク式試験機を用いて,摩擦・摩耗特性を測定した.その結果,TEMPO系OFMに含まれている環状構造と酸素ラジカルがOFMの油溶性を向上させることや,アミド基が潤滑性能に大きく寄与することなどを明らかにした.また,アルキル鎖二本をもつ分子は,C12TEMPOよりも摩擦低減効果が高い特長をもつが,効果の持続性が不十分な点が課題であることを見出した. ・水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて,OFM表面吸着特性の高精度測定を実現し,摩擦・摩耗特性との相関を評価した.その結果,摩擦低減には,OFM吸着膜の面密度ではなく,吸着速度を高める分子設計が重要であること,またQCMで測定した静的吸着特性のみでは摩耗特性の解釈が困難であることを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように,目的の達成に向けて研究を着実に進めており,結果も得られている.そのため,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
QCM測定でOFM吸着膜の形成を確認できたため,今後は,原子間力顕微鏡を用いたマイクロスケールにおけるOFM吸着膜の特性評価を重点的に進める.
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Causes of Carryover |
新規OFM分子の合成を比較的順調に行え,また研究の進展に合わせて,原子間力顕微鏡を用いた測定より,水晶振動子マイクロバランスを用いた測定を優先したため,当初の予算額より実支出額が下回った.今後は,原子間力顕微鏡を用いた測定を重点的に進めるため,その予算に充てる予定である.
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