2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of passive cooling driven by self-propelled drops
Project/Area Number |
19K21926
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
城田 農 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (40423537)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 液滴推進 / 核沸騰 / 濡れ性 / ピニング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の最大の研究成果は,前後対称形状である直角二等辺三角形であっても,濡れ性に前後非対称性を持たせれば,加熱された液滴は沸騰を伴いながら一方向へ推進することを示したことである。この成果を受けて,今後の推進方策として,(1)親水・撥水性領域の大きさを定量的に変化させることと,(2)濡れ性が変化する界面における沸騰現象を可視化計測し液滴界面変形および推進特性との関連性を明らかにすることを挙げた。 そこで今年度はまず,親水・撥水性領域の大きさを定量的に変化させる手法を2通り見出した:前年度同様にアルミラチェット面へ塗布した超撥水コーティングを0.1 mm精度で幅を変化させた定規を用いてピックで擦ることで剥離させる手法と,プラズマクリーナを用いて非マスク領域を親水性化する手法である。 超撥水領域を剥離する手法を用いて,親水性領域の幅を0.1mmから0.7mm程度まで,0.1 mm刻みで変化させ,核沸騰による推進力と,表面張力によるピニング力の変化を調べた。その結果,親水性領域の幅が0.3 mmにおいて,水平に置かれたラチェット上を推進する液滴加速度が最大となることを明らかにした。 プラズマクリーナを用いた濡れ性変化実験では,処理前の接触角が60°程度のアルミおよびITO膜を蒸着させたスライドガラスに,適切なマスキングを施し5分程度プラズマ照射した。その結果,どちらの部材においても非マスク部の接触角を5°以下に低減させることに成功した。 また,濡れ性が変化する界面における沸騰現象を可視化計測することを目的として,撥水性の透明ガラス平板上に親水性領域の幅を周期的に変化させて現れるよう施工したものを加熱し液滴を置いたところ,ラチェット上と同様の界面変形を伴いながら液滴は一方向へ推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,計画通り親水・撥水性領域の大きさを定量的に変化させる手法を確立し,水平に置かれた加熱ラチェット上の液滴推進における最適条件を見出した。さらに,当初計画には無かった,プラズマクリーナによる濡れ性変化と,透明平板上での沸騰を伴う液滴推進にも成功した。以上のことから本年度の進捗状況は当初の計画以上に進展している。 プラズマクリーナを用いて親水・撥水性領域の大きさを変化できることは,ハイブリッド濡れ性ラチェット製作時間の大幅な短縮につながる。従来の超撥水コーティングを剥離する手法では3時間程度要していた工程を10分程度に短縮することが可能である。ただし,そのためには,プラズマ照射に対するマスキングを効率良く行うための治具が必要である。 透明平板上で核沸騰を伴う液滴推進を実現できる手法を確立したことは,本研究課題のメカニズム解明に関連する「濡れ性が変化する界面における沸騰現象とそれによる液滴界面変形」の計測を,より実現象に則した環境において行えることにつながる。さらに,透明平板であれば,研究代表者がこれまでに開発した全反射法を用いた液滴沸騰観察手法を適用できるため,濡れ性が変化する領域における沸騰現象を高精度に計測することが可能となる。これら可視化・計測手法と,前年度に実施した疑似二次元液滴を用いた内部流動および界面変形計測結果と比較することで,沸騰を伴う液滴推進メカニズム解明が期待されるため,透明平板上で加熱液滴推進を実現できたことは,大きな研究進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目的は,液滴の三次元的な移動制御とそれによる加熱面の冷却である。本年度の研究成果によって水平に置かれたラチェット上の最適推進条件は得られた。そこで次年度は,(1)登坂性能と濡れ性領域の関係性,および(2)核沸騰を伴う液滴推進による冷却熱流束の計測を実施する。 登坂性能と濡れ性領域の関係性を調べる上で,ラチェット上面の濡れ性変化は主にプラズマ照射法によって与える。ただし,これまではラチェット面のうち緩斜面の濡れ性変化のみに着目してきたが,次年度はより高いピニング力が得られることを期待して,急斜面の濡れ性変化の影響も調べる。そのために,マスキング用の治具を0.05mm精度の金属加工によって製作する。 また,液滴登坂能力に与える液滴径と基板温度の影響についても,体系的に変化させた実験を通して明らかにする。 核沸騰を伴う液滴推進による冷却熱流束を計測するために,透明サファイア表面にITO膜を蒸着した加熱基板を用いる。当基板に,親水性領域の幅を周期的に変化させて付与することで,基板表面温度分布の時間変化をサーモグラフィカメラによって計測する。得られた温度分布を境界条件とし熱伝導方程式を解くことで,加熱基板から液滴へ与えられる熱流束を算出する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,研究成果発表のための学会がオンライン開催となった。そのため,当初計画していた出張旅費が浮いた。残額は,次年度の消耗品費として執行予定である。
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