2019 Fiscal Year Research-status Report
中耳再建素材の最適化プラットフォームの構築と耳小骨再建への臨床応用
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19K21949
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
朝倉 巧 東京理科大学, 理工学部機械工学科, 講師 (60778207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉科 佑太 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (40801535)
栗原 渉 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90826926)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 耳小骨 / 鼓室形成術 / 再建モデル / 有限要素法 / 振動音響伝搬 / 伝音特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
中耳真珠腫,中耳奇形,耳小骨離断など気骨導差を生じる疾患に対し、伝音系を再建し聴力を改善することで患者のQOL向上を目指すのが耳小骨再建手術である.既往の研究では,健常なヒト中耳の伝音メカニズムに関する研究は数多く行われているが、耳小骨再建手術によって再建された中耳の伝音特性についての研究は少ない.したがって,鼓室形成術の成功率向上のため,再建された中耳の伝音特性に関する力学的知見を得ることは重要である.本研究では、有限要素法解析を持ちいて複雑な形状の構造を容易にモデル化し、解析によって出力された振動特性を基にして、様々な再建形状が聴力の回復へ与える影響について議論する.本年度は,耳小骨破壊や固着を伴う手術に対して選択されることが多い耳小骨形成術Ⅲ型とⅣ型について,その伝音特性を有限要素法解析モデルおよび縮尺模型を用いて検討した。 外耳道、鼓膜、および耳小骨を模した有限要素法解析モデルを作製し,腱や靭帯を含めたヒトの中耳を再現した.本研究で作成した有限要素法解析モデルは,外耳道部分は音響解析モデル,鼓膜以降の中耳部分は振動解析モデルで構成されている.本モデルを用いて,外耳道入口部からアブミ骨頭に至る振動音響伝搬に関する周波数応答解析を行った.その結果,アブミ骨頭の変位がナノメートルオーダーとなり,小池らが過去に行った有限要素法解析の結果と概ね一致する結果を得た.次に,鼓室形成術により再建されたⅢ型およびⅣ型をベースとした中耳の有限要素法解析モデルを作製し,上記と同様の周波数応答解析を行うことで,再建された中耳の伝音特性を評価し,手術型による伝音特性の変化を検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度において,振動音響解析によるパラメータスタディ,振動実験・解析による最適形状の探索,また再建形状の動物への移植と、聴力回復を確認するための予備検討までを行うことを想定していたが,耳小骨の振動音響解析を行うための有限要素モデルの構築、および妥当な解析パラメータの設定、および実験結果との比較による妥当性の検証に予想を上回る期間を要したため、進捗は(3)やや遅れているとした.しかしながら,次年度において,既に確立された解析手法を用いた最適形状の探査,および動物実験による聴力回復の確認をスピーディに行うことが可能であることが推察されるため,引き続き検討を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度において,既に確立された有限要素法モデルおよび振動実験を用いた最適な再建形状の探査,および当再建形状が聴力回復へ与える影響について,動物実験を用いて検証する.
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Causes of Carryover |
2019年度において,既に東京理科大学で保有していた計算機を使用したため,解析に要するはずであった諸経費が未使用となったことが理由である.ただし,当該計算機の性能では必要とされる解析に要する計算時間が比較的長大化してしまうため,2020年度において,さらに高性能な計算機の購入を予定している.
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