2020 Fiscal Year Research-status Report
Demonstration of ultrafast resonant tunneling transistor
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19K21951
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
冨岡 克広 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (60519411)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 薄膜・量子構造 / ナノワイヤ / トンネルFET / 超格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代電子スイッチ素子は、低消費電力化と高性能化を両立する必要がある。低消費電力化のためには、電界効果トランジスタ(FET)のスイッチ性能のサブスレッショルド係数について、キャリアの熱拡散原理の物理限界を回避し、新しい電流輸送機構で動作するスイッチ素子の実現が不可欠である。これまでにトンネルFET、負性容量ゲートFETなどが次世代スイッチ素子として期待されているが、トンネルFETは、トンネル確率で電流値が決定されるため得られる電流値が非常に小さく、負性容量ゲートFETは、誘電率をマッチングするため高速(高周波)動作に向かない。以上から、低消費電力化と高性能化は現行の次世代トランジスタ候補ではトレードオフがあり、低消費電力化と高性能化を両立した新しい原理の次世代スイッチ素子は実現されていない。本研究は、半導体ナノワイヤの長軸 方向に独自の成長手法で超格子構造を形成し、縦型のサラウンディングゲート構造による小さな電界変調によって、伝導帯に形成された多重ポテンシャルで生じる準バリスティック輸送・共鳴トンネル輸送を制御しスイッチングする新しいトランジスタ構造の動作実証を行なう。 R2年度は、超格子ナノワイヤ選択成長と共鳴トンネル動作の検証を進め、InGaAs/GaAsの組み合わせからなる超格子ナノワイヤが目標構造に適していることがわかったため、主にInGaAs/GaAs超格子ナノワイヤ結晶成長技術の確立に主眼を置き、以下の研究事項について実施した。 (i) InP(111)B基板上のInGaAs/GaAsナノワイヤ超格子構造の成長および成長機構の解明、(ii)Si基板上のInGaAs/GaAs超格子ナノワイヤのダイオード素子の試作と特性評価、(iii)コアシェル型ナノワイヤ構造のFET特性の検証
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下にそれぞれの達成状況の詳細を記す (i)MOVPE選択成長法によりInP(111)B基板上のInGaAsナノワイヤ選択成長において、In組成70%からなるInGaAs層とGaAsの組み合わせからなる超格子構造をナノワイヤの長軸方向に形成する選択成長機構を調べた。InGaAs/GaAs超格子ナノワイヤ成長後、XRD評価による組成分析を行ったところ、InGaAs層成長終了直後における(111)B表面上のIn残留分子がGaAs層成長に取り込まれるため、GaAs層が混晶化することがわかり、InGaAs層成長直後にAsH3パージを導入し、残留In原子の固相化によって、混晶化を抑制する手法を見出した。これによって、In-rich InGaAs/Ga-rich InGaAs超格子層の形成が可能になった。この他InGaAs/InAs超格子ナノワイヤの選択成長を実施した。 (ii)(i)の超格子ナノワイヤについて縦型ダイオード素子を作製し、電流・電圧特性を評価した。InGaAs/InAs超格子ナノワイヤについては、順方向バイアス1.2 V程度で共鳴トンネル輸送を示す負性微分抵抗領域を生じ、In-rich InGaAs/Ga-rich InGaAsにおいても、順方向アイアス0.5 V付近において負性微分抵抗領域を生じ、目的とする超格子構造を形成できること実証した。 (iii) 超格子ナノワイヤの選択成長では、ナノワイヤ側壁にもヘテロ接合が形成される可能性がある。これを共鳴トンネルFET動作と切り分けるため、今年度は、意図的にコアシェル構造を形成したナノワイヤのFET素子を作製しスイッチ特性を評価し、コアシェル型構造では、バイポーラ特性が支配的になる傾向があり、共鳴トンネルFET動作との差異について知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、これらの知見を活かして、以下の研究を実施する予定である。 [1]結晶成長(i) InP(111)B基板上のInAs/InGaAs超格子およびInGaAs/GaAs超格子ナノワイヤの不純物ドーピング、(ii)Si基板上のInAs/InGaAs超格子およびInGaAs/GaAs超格子ナノワイヤ選択成長と不純物ドーピング [2]電子素子応用(i)不純物ドーピングにともなうコンタクト抵抗低減化による負性微分抵抗領域のピーク電圧の低減化(ii)上記結晶成長の項目、ダイオードの研究項目から得られた知見を基に、縦型トランジスタ構造を作製し、共鳴トンネル輸送のゲート電圧変調を実現し、高性能化を図る。
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Causes of Carryover |
予定していた消耗品購入について、研究進捗を考慮し次年度に購入するため
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Research Products
(12 results)