2019 Fiscal Year Research-status Report
強磁性材料の量子効果を用いた超高速低消費電力磁化制御法の開発
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19K21961
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
Le DucAnh 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50783594)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピンダイナミック / 波動関数工学 / 超高速磁化制御 / ポンプアンドプローブ / 強磁性量子井戸 / 強磁性半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高品質の(In,Fe)As強磁性量子井戸構造の成長法を確立した。分子線エピタキシー法を用いて下から順にGaAs(001)基板の上 に低温成長GaAs(成長温度:200℃、アニール温度:600℃)、BeドープGaSbバッファー層、AlSbバリア層、(In,Fe)As量子井戸層 (成長温度:236℃、Fe濃度:6-8%)を作製し、透過型電子顕微鏡で単結晶構造を確認した。(In,Fe)As薄膜において磁気円二色性測定でバンド構造のΓ点においてスピン分裂と量子サイズ効果を初めて観測できた。この成果はAppl. Phys. Expr.へ発表した。 2.成長した(In,Fe)As量子井戸構造において、波動関数制御によるサブピコ秒の応答が実現しているかを検証することを目的に、フェムト秒パルスを用いて、時間分解共鳴磁気光学効果(Resonant Magneto-Optical Kerr Effect, XMOKE)測定を行った。試料は、In0.95Fe0.05As単膜及び電極を取り付けたInAs/In0.95Fe0.05As/InAs三層量子井戸構造を用意した。XMOKE実験はSACLA BL1Aにおいて行われ、信号は極Kerr効果測定配置にて計測した。時間分解XMOKE測定は、Pump光として波長800 nmのTi-サファイアレーザーを用いた。冷却用のマニュピレータを用いての試料温度はTC以下の15 Kに保ち、Nd磁石により~0.8 Tの磁場を面直方向に印加して測定を行った。InFeAs試料が常磁性から強磁性相になることで磁化が誘起され、5.3度のKerr回転角が変化したと考えられる。また、TC以下で測定されたInFeAs単膜の時間分解XMOKEを測定し、Pump光とProbe光の時間差を変えることで、数psでの強度変化を観測した。Pump光により磁化が瞬時に増大したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では①強磁性量子井戸の結晶成長と特性評価、②量子井戸薄膜でpump&probe法で磁化の磁化応答を測定・解析(光学的な制御法)、③量子井戸薄膜から電界効果トランジスタ構造に加工し、ポンプアンドプローブ法でピコ秒の電気パルスをトンジスタに印加し磁化の応答を同期で観測。昨年度では①と②の内容を実施し、③の基盤技術を整えた。次年度で②をより解析して理解を深めると共に③を実現する予定である。このため本研究は計画通りに進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(In,Fe)Asの強磁性量子井戸(QW)の上に個体の絶縁膜からなるトランジスタ構造を作製する。フェムト秒レーザと光伝導スイッチ(PS)構造を用いて超高速(ピコ秒オーダー)電圧パルスの生成方法を確立する。またこのpsオーダーの電圧パルスを(In,Fe)As量子井戸に印加して、ポンプアンドプローブ法で磁化応答を観測する。 具体的に(In,Fe)As QW構造と低温成長GaAs(LT-GaAs)の上に作製した光伝導スイッチ(PS)が直列に繋いだ構造に固定電 圧VDCをかける(従ってVDC = VQW + VPS)。PSにフェムト秒(fs)レーザのポンプ光を照射すれば光電子生成と再結合のためピコ秒(ps)オーダーの時間でPSの抵抗が大きく下がるため、QW構造にピコ秒程度の極めて速い電圧パルスをかけることができる。同時に、(In,Fe)As QWの磁化応答 は同期したプローブ光のカー回転で測定し、スピンダイナミックを評価する。観測したスピンダイナミックス過程を理論計算と比較して解明す る。 本研究は、原則として、研究代表者がすべて行う予定である。Pump & Probe測定のため理研のSACLA実験装置など、他の実験施設で実験を行う予定である。
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