2019 Fiscal Year Research-status Report
三次元トポロジカル欠陥の意図的導入による等方性液晶の創成
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19K21975
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾崎 雅則 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50204186)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 液晶 / 配向欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶は、本来一様な分子配向状態を形成する。本提案では、液晶内に三次元配向欠陥(トポロジカル欠陥)を意図的かつ制御して導入し、新たな液晶秩序(等方性液晶)の創成とその応用の可能性を探った。すなわち、従来、有害なもの不要なものとして排除されてきた液晶内の配向場の不整合(トポロジカル欠陥)を積極的に活用・制御することにより、これまで自然界ではごく限られた条件下でのみ現れていた液晶秩序(光学的等方状態と類似)を人工的に発現させることを目指して、ウォールの生成と安定性について検討した。配向法による基板界面の配向を制御し、ループ状線欠陥を生成後、電界を印加することでループ状ウォールの生成、安定化を試みた。界面配向制御と電界印加、除去のプロセスを踏み、配向場のトポロジーを制御することで、消滅した線欠陥の再生成を抑制し、ウォールを生成できることを明らかにした。ウォールの生成はトポロジー的な制約とエネルギー極小条件を考えることで説明することができる。また、ウォールが存在する配向場を解析関数を用いて設定し、液晶の弾性エネルギーを解析することでウォールが安定化されていることを示したとともに、セル厚が小さく、パターン半径が大きいほどウォールは安定に存在できることを導いた。さらに、電界印加時のダイレクターの方位角、極角を解析し、ウォール生成時に生じたねじれがπ以上の領域におけるねじれの反転を確かめた。得られた知見をもとに、任意形状のウォールを生成、安定化させた。以上より、界面配向制御により様々な形状のループ状ウォールを生成、安定化可能であることが示された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、本来自己組織的に秩序形成を行う液晶に対して、人為的な秩序を付加することにより、光学的に新たな分子配向状態を実現しようとするものである。その手法として、液晶三次元空間内にトポロジカル欠陥を導入し、等方的な秩序の安定化を図ることを目指している。具体的には、我々がこれまで提案してきた局所パターン配向技術による線状トポロジカル欠陥の生成技術を活用する方法と、元々トポロジカル欠陥との共存により三次元配向秩序を有するブルー相液晶などに空間欠陥を人為的に導入する方法の二つのアプローチを計画していた。本年度は、前者の一つとして、界面配向制御によりループ状線欠陥を生成し、そこから電界印加によりウォールの生成の可能性を検討し、その安定性を検証した。その結果、見事にループ状ウォールの生成と安定化が可能であることを示すことができており、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究をさらに進めることに加えて、電界によるループ状ウォール欠陥の状態制御、異種物質の導入によるウォールおよび欠陥のさらなる安定状態の検証、さらに、異なるパターン界面配向による異なるトポロジー欠陥の生成と安定化を試みる。加えて、光干渉系を構築し、三次元局所光重合あるいは光異性化反応の実現を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度の研究計画は概ね予定通り進展したが、当初実施を予定していた分子配向条件の最適化が当初予想していた以上に順調に実現され、計画していた実験の試行回数が大幅に減少した。したがって、条件最適化に必要な材料等の購入を行わなかったため残額が生じた。また、関連して、上記実験の補助にかかる人件費も使用しなかったが、令和2年度 にさらなる最適化を実施するため執行予定としている。加えて、年度末に予定していた実験、成果報告および情報収集が、新型コロナウィルス対策ための行動自粛により実施できなかった。その分の経費に残額が生じたが、令和2年度に繰り越して実験、情報収集等を行うため執行予定である。 (使用計画) 当該実験は令和2年度に入ってから実施し、より配向性の高い秩序構造の実現を目指し、本研究の目標の達成を目指す。従って、令和2年度において配向剤等の必要部材を購入する予定であり、補助に係る人件費も必要となる予定である。また、新型コロナウィルス対策の行動自粛へは、オンラインでの情報収集、成果報告を併用することにより対応する予定である。
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