2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K21977
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 和利 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10563827)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 無線通信 / 暗号化 / 高セキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、5Gの機能をさらに高度化したシステムへの適用を想定し、高周波電波の特長の利用によりセキュリティ性向上が可能となる無線通信技術の提案とその検証システム実現を目的とし、(A)高速高精度ビームステアリング技術、(B)二つの信号からの暗号化信号復調(AND動作)技術、(C)二つのRFからのコヒーレント検波技術に取り組んだ。 特に本研究の成否のカギは(B) 暗号化信号復調技術(AND動作)における研究課題である、「二つの異なる方向からの電波の受信」と「ANDをとる受信技術」である。後者に対しては光波をキャリアとして用いたAND動作の原理実証と実際の300GHz帯キャリアを用いた動作確認が完了し、実際の通信実験への適用を行う直前にまで到達した。前者に対しては、計画を前倒して事前検討として開口角を2.5倍拡張するレンズ(準光学アンテナ)を安価なテフロン材を用いて試作しその実現性を確認した。研究成果は、ECOC2019(ダブリン), APMC2019(シンガポール)などの主要国際会議で口頭発表を行った。特に本研究の成否のカギである(B)暗号化信号復調技術(AND動作)に関する発表ではMTSA2019(釜山)において優秀発表表彰を受賞した(当該国際会議では表彰論文は本発表の1件のみであったこともあり内外の研究者から注目を浴びた)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本提案の通信方式に不可欠な技術である、(A)高速高精度ビームステアリング技術、(B)二つの信号からの暗号化信号復調(AND動作)技術、(C)二つのRFからのコヒーレント検波技術に取り組み、いずれの技術についても目標を達成し、主要国際会議で口頭発表を行った。特に本研究の成否のカギである(B)暗号化信号復調技術(AND動作)に関する発表ではMTSA2019(釜山)において優秀発表表彰を受賞した(当該国際会議では表彰論文は本発表の1件のみであったこともあり内外の研究者から注目を浴びた)。計画を前倒して事前検討として開口角を2.5倍拡張するレンズ(準光学アンテナ)を安価なテフロン材を用いて試作し、設計通り約2.5倍の広がりを観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度は、本研究代表者の既開発技術である、光導波路をベースにした光位相調整器をFPGAで生成した正弦波形電圧で1ミリ秒の繰り返しのビームステアリングを実現した。この動作原理は、二光波の一方の光位相のずれが、生成されるテラヘルツ波の位相ずれとなるというフォトミキシングの特徴に基づいて、光導波路に流す電流量によって発熱量つまり温度を変え、その結果屈折率変化で1um程度の光位相変化を起こさせるものである。1umは光波長の一波長分であるため、テラヘルツ波も一波長分に相当する1mm程度位相が変化する。現在までに光位相調整器への印加電圧(結果として電流が流れる)の調整により二分の一波長の変化で全幅35°のビームステアリングまで確認している。本技術を用いて1°以下のビーム出射角精度を達成するためには二光波の相対位相を光波長の1/360である0.01um以下の精度で設定できることが必要条件である。R1年度では高速性と精度の両要件を満たすサンプリング周期200MHz、分解能16ビットのFPGAとAD変換器を用いて、まず高速性を実現した。R2年度は、すでに研究代表者らが同機種のFPGAでの制御により波長可変レーザの100ナノ秒以下の波長切替を実現している技術を活用し、静的位相調整にとどまらず、光位相調整器の熱光学定数(熱伝導速度)を考慮した動的制御をFPGAに実装し高速性を維持したまま精度±1°を実現する(100mの無線通信において±1.7mの精度に対応)。さらにR1年度に開発した準光学アンテナを2段組み合わせて広がり角6倍を実現することと並行して、非球面レンズの開発により部品点数を最小限に抑えたコンパクトなアンテナを実現する。これらを用いて120°異なる方向からの電波の角度差を20°以内にすることでチップ集積型平面アンテナの指向角内に収め、同時受信を実現する。
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Causes of Carryover |
日本の代理店を通じて欧州企業から電子部品を購入する予定であったが、新型コロナウイルスの欧州での感染の影響により企業活動が停止し、出荷が延期となった。当該物品は令和2年度第一四半期には納入予定である。また当初令和2年度に計画していた支出も変更はないため、研究期間内に研究計画に記載の通りに研究費を使用の予定である。
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