2019 Fiscal Year Research-status Report
Dynamics of granular flow with multi-scale and quantum mechanics
Project/Area Number |
19K21990
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
前田 健一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50271648)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 粒状体 / 流れ / フルード数 / 相似則 / 応力鎖 / マイクロメカニクス / 量子力学 / 応力波 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒状体の流れについて,「粒子性」と流れ内部を伝播する応力波による「波動性」の二重性(量子力学的視点)に着目することで,それを支配するダイナミクスの解明の画期的な進展をねらったものである。 ●固・液相の相互作用を考慮した数値解析コードの開発: 既に開発済の3次元DEMに流体との連成効果を導入し,GPGPU(General Purpose Graphics Processing Unit)を用いることで計算の効率化ができた。今までのDEM解析の実績を活かし,研究の実現可能性を高めることができた。また,解析も活用し,粒子~応力鎖~流れの層構造という異なるスケールの現象の繋がりを可視化できた。 ●粒状体の流れ・堆積挙動,内部の応力波伝播挙動に及ぼす粒度や粒形などの粒子特性,間隙水の有無,河床粗度,傾斜角の影響の検討と新たなフルード則の創出: 土砂移動の流下・堆積挙動,流れ中に発生する波動に及ぼす底面粗度・傾斜角の影響,粒子形状による回転抵抗の増加と応力鎖の安定性との関係などを模型実験と数値解析を実施し詳細に調べた。応力鎖の発生条件,その構造的安定性,消滅などの力学的条件,応力鎖の不均質な分布などによって生じる応力の疎密の波動の速度の関係を明らかにした。その波速と流れの速度との相対関係から粒状体流れのフルード則を新たに定義した。新たなフルード数の導出によって,応力鎖発生・消滅のパターンとゆらぎの発現条件,深度方向の速度構造の形成,河床特性との関係を明らかにした。これらから,流体力学的側面と粒状体としての側面の両方の特性を示す,二重性があることが分かった。 ●大きな粒子の浮き上がり,分級のメカニズムの解明とスティック・スリップ: 乾燥流れでも大きな粒子が浮き上がったり,先端に集まったりする現象が発生することが明らかになった。応力鎖のダイナミクスから浮き上がり条件を解明され得ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のように当初予定してした結果や目的達成を示唆する結果が得られた。 ●流れ表面の速度の周期的・非周期ゆらぎをスティック・スリップ現象として捉え,流れに潜む粒子性と波動性の二重性(量子力学的捉え方)を見出し,流れの支配因子を浮き彫りにできることを示した。流れ挙動に及ぼす粒度や粒形,間隙水の有無,河床粗度,傾斜角の影響について,内部の可視化模型実験と数値解析を用いて調べることができた。限界状態土質力学の成果も活かし,粒子レベルの挙動と流れの中の応力・変形・間隙比との関係を統一的に捉えるめどが立った。 ●スティック・スリップ現象を流れ中の応力鎖の発生・消滅と関連付けて説明し,流れ中の疎密による応力の波動伝播特性を明らかにするとともに,伝播速度を用いて河床特性や粒子特性、流れの特性を統一的に関連付けできる可能性が高いことが分かった。マルチスケールの視点から限界状態の概念を組み入れることで,導出したフルード数を用いた解釈が可能であることが示された。 ●大きな粒子が浮き上がり先端と表層に集中する現象,分級現象のメカニズムをマルチスケールで解明することができた。応力鎖と流れの中の応力波が発生していることを発見できたことが,計画通りに進捗していることに繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下のことに注力することで,予定通りに計画を進捗させることが可能と考える。 ●応力鎖のダイナミクスと限界状態の概念を取り入れた流れのモデリング(限界状態の正体と量子論的モデリング): 過去の研究成果を基にして,応力鎖という代表的な構造単位の力学特性を記述し,連続体近似を用いることで,粒状体の動的な変形・破壊挙動を記述するモデルを構築する。その際に,パーコレーション理論や繰り込み理論を応力鎖の成長過程記述のために導入する。発生した応力鎖がどのように安定して遠方まで成長できるのかを検討するためである。また,粒状体の特徴的な概念で状態を記述するのに有益な限界状態は地盤力学の拠り所の一つである「限界状態」の持つ意味を量子力学的応力鎖のダイナミクスという視点から考察し,モデルの構築をより簡明化する。
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Research Products
(12 results)