2019 Fiscal Year Research-status Report
Methodological Transformation for Planning Displacement and Resettlement in the Context of Natural Disaster and Climate Change
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19K21999
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森 傑 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80333631)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 住民移転 / 再定住 / コミュニティ / 災害 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日のアジア太平洋地域は、東日本大震災などの自然災害を機とするものに限らず、気候変動による長期的な海面上昇、人口集中によるスラム化、急激な経済成長によるエネルギー需要などを機に、住民移転を検討せざるを得ない喫緊のグローバルな問題に直面している。コミュニティ移転は環境志向で適正規模の居住環境の再構築へ向けての実効的な再定住手法として注目されており、地域社会のサステナビリティを考える上で有効な計画論とそのモデルの検討が必要である。 本研究は、アジア太平洋地域において大災害や気候変動、都市開発などを機に実施されている住民移転について、住民自身の自発的な居住地の選択としての移転(Voluntary Relocation)ではなく、公的機関やNGOなどの支援団体により資金が投入され計画的あるいは強制的に住民移転が実施されるケース(Forced Displacement and Resettlement)に注目し、当該住民が新たな生活環境に対してどのように適合してきたのかについて環境移行理論の視点から分析することを目的とする。 2年間の実施計画として、1.アジア太平洋地域のパイロット的事例における移転計画の特徴の比較、2.環境移行理論に基づく生活者(移転者)の環境適応プロセスの分析、3.生活者の定着実態からみた既存計画手法の空間的・制度的限界の考察、の課題群に取り組むが、令和元年度は、防災移転の事例として中国懐化市じょ浦県での堤防建設に伴う住民移転、および、開発移転の事例としてベトナム Pachepalanhでのダム建設に伴う強制移転のフィールド調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)中国懐化市じょ浦県(洪水氾濫に対する堤防建設に伴う強制移転)/中国では1954年頃から長江流域周辺での洪水災害が頻発したため、被害の拡大を防ぐためにダムの建設を進めてきた。特に長江流域の支流沿いの町では、居住者の安全を確保し生活を継続させるための住民移転を実施してきた。その一つであるじょ浦県は、長江流域の支流の中流に3つの区域(城北・長楽坊・桔花園)を持つ小さな町である。堤防建設に伴う住民移転の計画プロセスと事業実施の方法について整理し、住民評価を踏まえた実状について分析した。 (2)ベトナム Pachepalanh(経済成長・電力需要を背景としたダム建設に伴う強制移転)/クアンナム省では水力発電ダムの建設(2006年完成)に伴い6つの村が強制的に移住させられた。Pachepalanhは、先住少数民族の一つであるCo Tu族が2005年に移転し、現在37世帯が生活している集落である。現在も独自の言語・習慣を維持しており、移転により提供された住宅を様々に改変・改修したり、住民自らで伝統的な集会所を建設したりするなど、十数年かけて民族特有の居住環境が再生されつつある。令和元年度は、実測調査・アンケート調査・インタビュー調査を実施し、居住実態の把握を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、上述の課題群1~3に対して、ベトナムと中国に加え、フィリピンおよびフィジーのパイロット的事例のフィールド調査を実施し、過年度の成果を相互関連的に整理することで、移転を強いられた住民の再定住とコミュニティの再生を目標に適用された空間的・制度的手法の効果と妥当性について、特に住民の環境適応過程のあり方(改修・改変行為)に照らして評価・検証する。それらの成果に基づき、自立的・持続的な居住環境を再構築するための新たな計画論的方策の開拓へ向けての萌芽的知見を得ることを目指す。 (3)フィリピン Tacloban North Villages(大規模災害による沿岸部から内陸への復興移転)/2013年のヨランダ台風により甚大な被害を受けたタクロバン市では、沿岸部の高潮で被災した住民の内陸への復興移転を進めている。全体で約17,000戸の供給計画であるが、2018年6月の時点で入居割合は約35%にとどまる。Tacloban North Villagesは、市が空港拡張のための住民移転用に確保していた既存公用地へ市と国がインフラ整備を行い、複数のNGOが住宅を供給する官民連携と、被災住民のセルフブルドとHOA(住宅所有者組織)の導入に特徴がある。 (4)フィジー Vunidogoloa(気候変動・海面上昇に伴う居住地消失に備えた事前移転)/フィジー全体で気候変動により600以上の集落が影響を受けており、政府は45の集落を移転させる計画を声明している。Vunidogoloaは海面上昇の危険によりフィジーで初めてコミュニティ移転を実施した集落であり、2014年に従来の集落位置から2km内陸への30戸の移転を完了した。既存コミュニティが移転先の立地と近隣関係の持続を希望しそれが実現された点に特徴がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染・拡散を配慮し、海外出張が中止となったため、次年度使用額が生じた。令和2年度において、当初予定されていたフィールド調査を実施する。
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Research Products
(1 results)