2020 Fiscal Year Research-status Report
農工連携による離島漁村集落のオフグリッドに向けた炭素・窒素の島内循環への挑戦
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19K22006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 千佳 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30413892)
米澤 千夏 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60404844)
川島 範久 明治大学, 理工学部, 専任講師 (70738533)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | メタン発酵装置 / バイオガス / 資源循環 / 生ごみ / 風環境 / 数値流体解析 / 路地形状 / 実測調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)島内の風環境の把握:令和元年度に作成した島内の地形や集落を解像した計算格子を用いて数値流体解析を行い、路地空間の3次元的な風環境の再現を試みた。集落の路地の多くは,周辺の外壁や石垣の高さよりも道幅が狭い路地で構成され,路地空間が風上建物後方の弱風域に入り,弱風域が主流方向に連続することで,集落全体の風速が小さくなっていた。海岸線に直交する路地についても,蛇行することで,風の侵入を防いでいることがわかった。路地内の弱風域は,屋根の包絡線の高さまで形成されており,包絡線は概ね地表面と平行になっていた。更に,平均風速の超過確率の空間分布を求め,通年で,路地空間の強風による非適風範囲となる頻度が小さいことを明らかにした。 2)小型メタン発酵装置の試作:1人ないし2人暮らしで1日あたりに発生する生ゴミを処理することを想定した小型メタン発酵装置を試作した。2槽式と1槽式の装置を試作し、ガスの発生量等の分析を行った。1槽式でも装置内部の担体の配置を工夫することにより、十分なメタン発酵が見込めることわかり、作成や保温等の維持管理も容易な1槽式を島に導入することとした。続いて、1槽式のプロトタイプを複数台作成し、令和2年度冬期に、屋内外で試験運用を行った。屋内に設置した場合は、安定してバイオガスが生成されたが、屋外に設置した場合は、外気温の低下により槽内の温度も低下し、ガスの発生量が減少したため、断熱材を槽の外側に取り付けるなど追加の対策を行った。槽内温度とガスの発生量、保温のための消費エネルギーの関係の分析など、引き続き検討が必要であるものの、試作した1槽式小型メタン発酵装置が想定した生ごみの処理能力を有していることを確認した。バイオガスの活用や消化液の島内の農地での利用についての検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響により、冬期の風環境実測は見送らざるを得なかったが、数値流体解析により風環境を再現し、島内の路地空間の形態と形成される風環境について、十分に理解を深めることができた。予定通りメタン発酵装置も試作機が完成し、屋内外での試験運用により各種データを取得できた。得られた成果に関して、論文執筆も進めている。以上を踏まえ、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.小型メタン発酵装置の試験運用と各種データの取得:研究代表者の研究室内に設置し、昨年度から継続して試験運用を行い、外気温、発酵槽内温度、ガス発生量などを試験的にモニタリングする。並行して、令和3年度夏期を目途に島内のコミュニティースペースを中心に、数カ所設置することを目指す。島内での作業を必要最小限とするため、簡易に組み立て可能なように、装置の構成に改良を加える。島内で1家庭当たりに発生するのと同程度の生ごみに相当する負荷をシステムに課し、島内及び都内で、夏期、中間期、冬期と各種データを得る。 2.生成物活用法の検討:各種現地調査や数値流体解析による風環境の結果をもとに、秋期の拡散なども考慮し、メタン発酵装置の導入候補地を協議し、決定する。島への訪問は最小限とし、オンラインでの打ち合わせを中心に進める。生成されるバイオガスは、飲食店での温水の生成やガス灯などでの利用を検討し、また、発酵で副生成物として生じる消化液は、液肥利用など、島内に還元する道筋を模索する。メタン発酵の仕組みや生成物の利用方法などは、島民参加型のワークショップを実施する。装置の使用感や生成物の活用法など、島民の意見を集約し、今後、同規模の集落へ導入する際の課題を抽出する。課題ワークショップについては、COVID-19の感染対策を十分に行ったうえで、現地での実施を予定しているが、感染拡大状況などにより、必要に応じて、オンラインに変更するなど、実施形態を再検討する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、令和2年度に島内で実施予定だった実験の一部を、研究代表者の実験室において実施し、また、令和3年度に繰り越したため。
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