2019 Fiscal Year Research-status Report
都市形成経過と公共交通網の現状からみた立地適正化計画の実現性評価に関する研究
Project/Area Number |
19K22010
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
浅野 純一郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10270258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳澤 吉保 長野工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (70191161)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 立地適正化計画 / 拠点 / 公共交通網 / 市街地集約化 / 市街地外集落 / 土地利用計画 / 基盤整備 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国内各都市で策定が進む立地適正化計画を対象に、同計画の市街地集約化シナリオの実現性や妥当性を検証することである。そのために、①都市形成経過の視点からみた市街地集約化の実現性、②拠点間の公共交通網の現状からみた拠点間ネットワーク化の実現性、及び③市街地外集落部の拠点化と交通施策のあり方の検討を行うこととしている。①についての方法は、市町村合併経過、基盤整備経過、土地利用計画の3つから都市機能誘導区域及び居住誘導区域指定の妥当性を複数都市の多数同時比較とケーススタディから検証するというものであるが、比較的早期に両誘導区域を指定した15都市を対象に、線引き運用経過(及び基盤整備経過を含む)と居住誘導区域指定との関係を分析してとりまとめを行った(論文提出中)。 ②については、立地適正化計画と地域公共交通網形成計画との整合性(複数都市の多数同時比較)と、公共交通網の現状からみた拠点間ネットワーク化の実現性(ケーススタディ都市の評価シミュレーションモデルの構築)の検証を行うとしていたが、長野市を対象として、交通拠点を中心とした居住人口分布からアクセシビリティ(以 下、AC)と人口密度との関係や、立適計画と地域環境交通網形成計画との関連性評価の分析を進めている。 ③については、2019年7月~9月に飯田市の三穂地区(典型的な中山間地である)を対象に、住民の強力や地元自治体、公共交通機関の協力をうけ、ワークショップを開催し、中山間地域の公共交通のあり方を検証した。成果をとりまとめている途中であるが、ワークショップの様子は以下のURLで公開している。 https://ae406d62-4790-4059-94cc-195f2dd37be8.filesusr.com/ugd/e3701b_bbbb22a0570149f4ad7a63cd252cf2e9.pdf
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、国内各都市で策定が進む立地適正化計画を対象に、同計画の市街地集約化シナリオの実現性や妥当性を検証することである。その目的を達成するために、①都市形成経過の視点からみた市街地集約化の実現性、②拠点間の公共交通網の現状からみた拠点間ネットワーク化の実現性、及び③市街地外集落部の拠点化と交通施策のあり方の検討、の3つの具体的課題を掲げている。 ①については、すでに査読論文投稿を済ませていて、一定の成果を上げている。その内容として、初期に立地適正化計画を策定した15都市の比較から、市街化区域の拡大経過に関しては、拡大の度合いと拡大の型(都市フォーム)との間に関係性は特段見られないものの、縮小段階(居住誘導区域の絞り方)では、縮小の程度が進むほど、立地適正化計画のモデルであるフィンガー形状を示すことを示した。つまり、フィンガー部に公共交通軸がしっかりない自治体では、このフォームは整合しない問題があることを論じている。 ②については、柳沢が中心となり、長野市を対象として交通拠点を中心とした居住人口分布をアクセシビリティ(以 下、AC)と人口密度との関係,また用途別都市機能施設の立地分布を表す用途施設 AC と施設までの集 中トリップの関係を分析した。また、居住地から施設までのトリップに与える影響を、居住人口 AC、 用途施設AC および施設までの所要時間を用い、移動手段別、少子高齢化の対象となる学生および高齢 者など,自由な移動手段を持たない階層を考慮し、年齢別に分析した。 ③については、2019年の夏季に飯田市でワークショップを行い、単に調査だけではなく、住民との双方向的なやりとりの中で、課題や方向性を見出し、自治体に実質的な提言を行う段階まで踏み込めた。以上のようなことから、研究は概ね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」を踏まえ、研究の最終年である本年は、②拠点間の公共交通網の現状からみた拠点間ネットワーク化の実現性、に注力する予定である。浅野が担当している課題では、市街地形成経過の背景が異なる長野市と豊橋市をとりあげ、国勢調査の調査区レベルの人口動態(密度)と公共交通軸の関係を1970年以降について通時的に分析している。このように過去からの市街地形成との関係から拠点間ネットワークの実現性やその地盤を検討している。この作業は順調に進んでいる。他方で、柳沢は、主に長野市の交通データ(交通機関別利用者データ)を用い、両誘導区域の妥当性の検証を行っている。具体的には、立地適正化計画と関連させる地域公共交通網形成計画を評価するため、まずは現状の長野市バス路線網沿線の人口分布および土地利用とバス利用実態を関連づけることで、バス路線、運行サービスが適切か評価するための定量的な分析を行っていく。 ③については、昨年に引き続き飯田市でワークショップの開催を検討している。コロナウィルスの状況によっては難しいかもしれないが、対象地は町の中心である橋南地区の協力が得られる見込みである。したがって、地方小都市の都市中心と郊外(中山間部を含める)との公共交通の利用状況とユーザー評価をワークショップで明らかにしたいと考えている。これが実現できれば、③については中山間地域の小拠点内における公共交通のあり方(小さな拠点の考え方に通じる)と都市中心における公共交通サービスのあり方と現実の双方について知見を蓄積することができる。③については浅野と柳沢の協働である。
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Causes of Carryover |
2020年の1月後半以降、新型コロナウィルスの影響があり、予定していた予算執行や調査を見合わせる必要が生じた。3月等には共同研究者である柳沢との検討会の場も考えていたが、できなくなった。年度末は大学の会計課も作業が逼迫したため、4月に入って、購入を予定していたGISソフトの購入をすすめるなど、遅れていた予算執行をとりもどしている。
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Research Products
(12 results)