2020 Fiscal Year Research-status Report
被災地で発生する軟弱泥土の積極的再利用による迅速な復旧工法の提案
Project/Area Number |
19K22022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (90188045)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 水溶性ポリマー / 軟弱泥土 / ジオポリマー / パーライト副産物 / 破壊強度 / 破壊ひずみ / 可搬性 / フロー値 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,豪雨による大規模自然災害が多発している.2011年8月に発生した台風23号による奈良県での大規模土砂崩落,2014年8月に発生した広島での大雨による大規模土砂災害,2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川の堤防決壊,2017年7月の秋田県雄物川の氾濫,2018年9月の台風21号による近畿地方を中心にした被害など枚挙に暇がない.これらの被災地では大量の軟弱泥土が発生するが,この軟弱泥土は被災地の復旧の妨げになる「厄介物」でしかない.そのため速やかに泥土を回収し,一定場所に運搬・排出することが災害に強い街づくりにとって極めて重要である.本研究では,紙おむつの製造工場から排出される廃棄水溶性ポリマーに注目した. 2019年度は,ジオポリマーとしては,フライアッシュ(FA)を用いたジオポリマーとペーパースラッジ灰(PS灰)を用いたジオポリマーの両方を用いて実験を行った.その結果,ジオポリマーの濃度を調整することにより,比較的短時間で強度発現が見られることが確かめられた.ただし,試料の養生時の温度により生成される土砂の強度が大きく変化することから,養生時の温度制御について,より詳細に検討する必要があることが分った. 2020年度は,廃棄水溶性ポリマー混合による可搬性の詳細検討およびパーライト副産物を用いた泥土改良について実験的に検討した.ポリマー添加直後はフロー値が小さく,十分な可搬性を示したが,添加量が少ない場合,経過日数とともにフロー値が増大することが確認された.従って,運搬された泥土を復興資材として再利用する場合は,ポリマーの添加量に注意する必要がある.パーライト副産物はパーライトを製造する際に排出される副産物であり,粒度が小さく多孔性であるため,軟弱泥土改良に非常に有効であり,改良土の強度も十分に大きくなることが確かめられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災地で発生する軟弱泥土は,復旧を妨げる厄介者でしかないため,速やかな排除が必要である.軟弱泥土の速やかな排除を実現するためには,泥土の可搬性を向上させる必要がある.2020年度は,廃棄ポリマーの添加量を種々に変化させ,フロー試験を行い,改良土の可搬性を調べるとともに,パーライト副産物を用いて泥土改良を行った.その結果,可搬性が高く,かつ30日以降もフロー値が増大することなく搬入した泥土を復旧資材として活用するためのポリマー添加量を把握できたこと,およびパーライト副産物を添加することにより良質な土砂に改良でき,復旧資材に活用できることを示し得たことは大きな成果であり,計画通り進んでいると判断している.さらにパーライト副産物とポリマーの両方を用いると,泥土の固化作用が大幅に向上し,軟弱泥土用の固化材として活用できることも確認できた.セメント系固化材を用いた場合,改良土はアルカリ性を示すが,パーライト副産物とポリマーの両方を用いた場合は,改良土は中性を示し,中世固化材としても有望であることが分かった.中性の場合は,農地が近くても使用可能であり,その活用範囲は非常に大きい.これは研究当初では予想していなかった成果であり,本研究がおおむね順調に進展していると判断する理由の1つである.
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Strategy for Future Research Activity |
研究は,ほぼ計画通りに進行しているので,特に大きく研究の推進方策を変更する予定はない.可搬性と強度特性がおおむね把握できたので,今後は乾湿繰返しに対する耐久性について検討する予定である.特に,ポリマーとパーライト副産物の両方を用いて中性固化材として利用した場合の改良土の強度変化は未知なので,これについて詳細に検討する予定である.
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Causes of Carryover |
廃棄ポリマーでも,添加量を適切に制御すれば,軟弱泥土を短時間で運搬可能になることを確認するなど,研究はほぼ計画通りに進行したが,道路啓開を目的として道路上の泥土にドローンなどで廃棄ポリマーを撒く場合,十分な撹拌が行われない可能性がある.昨年度はコロナの影響で,撹拌が十分ではない場合の可搬性を検討することができなっかた.このための実験を次年度でより詳細に行う必要あることから,実験のための経費を次年度使用額としたためである.
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