2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the mechanism of novel method to control oxidation by block the diffusion path at the lattice defects level
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19K22035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柴山 環樹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10241564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 祐貴 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00787153)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 銅 / Heイオン / イオン照射 / 水中結晶光合成 / 酸化銅 / 低温酸化 / ナノ結晶 / 残留弾性歪 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、Heイオンを純銅に照射すると表面に酸化物結晶や酸化皮膜の形成が抑制する現象を見出した。特に、半導体プロセスや日常のアプリケーションで用いられる環境である低温での酸化挙動についてはこれまであまり検討されることはなく、系統だって明らかにされていなかった。この新奇酸化抑制機構が明らかになれば、画期的な腐食防食法となり電子部品の長寿命化や環境低負荷に貢献できると考えられる。そこで、本研究の2年目では、純銅にHeイオン照射後の大気中での低温酸化挙動について、Heイオン照射量による銅表面や内部の微細組織や微細構造の変化について、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて明らかにすることを目的とした。 供試材として、市販のCu多結晶と単結晶Cu(100)、Cu(110)、Cu(111)を用いた。Heイオン照射は、北海道大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの複合量子ビーム超高圧電子顕微鏡に附属する線型300keVイオン加速器を利用した。加速電圧は、100kV、照射量は5×10^16 He ions/cm^2を目標に室温にて照射した。照射後の試料についてFE-SEMに附属するEBSDにより各領域の菊池マップを取得し、それらを歪がないとした領域の菊池マップと比較することによって残留弾性歪を測定するCross Court 3を利用して、照射領域と非照射領域の界面に誘起される残留弾性歪の各成分を評価した。昨年と同様に、超純水中でUV照射を1試料につき48時間行い、表面に形成した酸化物についてFE-SEMによる微細組織観察と附属するEDSを用いて元素分析を行った。今年度は、200℃以下の低温大気中における酸化挙動についても表面に形成した酸化物についてFE-SEMによる微細組織観察と附属するEDSを用いて元素分析を行った。更に、顕微ラマン分光と平行ビーム法によるX線回折(XRD)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度当初は、コロナ禍のため、実験室の立ち入りが制限された。そのため、実験室の様子をデジタルカメラや全天球カメラで撮影してモニターし、実験室への立ち入り人数を減らしながら実験機器の状態を把握して感染防止対策を行って安全かつ精度の高い実験が行えるように努めた。また、TEMやSEMは、オンライン会議ソフトを利用したリモート観察を行えるように設定して実施した。更に、試料のみを送付して実験装置担当者が試料加工や測定を行うナノテクノロジープラットフォーム事業等の共用事業の技術代行を利用したので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、水中結晶光合成による純銅基板上に形成する酸化物結晶成長について、Heイオン照射による抑制効果を確認し、令和2年度は、200℃以下の大気中の低温酸化についてHeイオン照射による抑制効果を確認した。特に、表面のSEM観察、ラマン分光及び平行ビームXRDから微細組織や構造の解析を進め、酸化抑制を確認した。最終年度である、令和3年度は、断面TEM観察やEDS分析等を行い、格子欠陥レベルで拡散経路を壅蔽する新奇酸化抑制機構を解明する計画である。
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