2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22040
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 修 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60447141)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 溶融酸化物 / 密度 / 表面張力 / 懸滴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高融点純酸化物の代表格であるMgO(融点2977℃)やCaO(融点2899℃)は、工学的観点からは製錬におけるスラグの主成分、ガラスやセラミックの重要成分であり、理学的観点からは地球内部のマントルを形成する主成分であるにも関わらず、融点の高さから純物質の熱物性は未だに実測値が無い。現状では、低温でも溶融する混合物の熱物性値から外挿して推定されている。本研究は、無容器測定を実現する浮遊帯域溶融炉(Xeランプ四楕円型帯域溶融炉)を用いて、懸滴法によって高融点純酸化物の熱物性(密度、表面張力)を直接測定することを目標とした。 平成31年度(令和元年度)は、2000℃前後の測定として、高融点純酸化物の中でAl2O3以外に密度と表面張力の報告値があるLa2O3(融点2256℃)とSm2O3(融点2269℃)の測定を予定した。La2O3については協力会社の支援により物性測定に供する焼結試料が作製でき、測定を行うことができた。Sm2O3については協力会社と相談しながら焼結試料の作製を試みたが、焼結丸棒が大きく曲がったり、膨らんで崩壊したりし、測定に耐えうる十分な密度と強度を有し幾何学的均一性がとれた焼結試料ができなかった。原因を目下究明中だが、原料酸化物(Sm2O3)が大気中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩(あるいは水酸化炭酸塩)となり、それが焼結中に分解することで、試料中に二酸化炭素が放出され、不規則な気泡ができたことが考えられる。 融点直上におけるLa2O3の密度は、酸素分圧の影響をあまり受けず、10-6~1 atmの間で5.2 g cm-3であった。La2O3の表面張力は、酸素分圧の増大とともに僅かに上昇し、10-6 atmで550 mN m-1、1 atmで570 mN m-1であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗状況が遅れているのは、測定に適したSm2O3焼結試料を作製できなかったためである。作製は、協力会社と相談しながら、色々な条件を試みたが、焼結丸棒が大きく曲がったり、膨らんで崩壊したりし、測定に耐えうる十分な密度と強度を有し幾何学的均一性がとれた焼結試料ができなかった。原因を目下究明中だが、原料酸化物(Sm2O3)が大気中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩(あるいは水酸化炭酸塩)となり、それが焼結中に分解することで、試料中に二酸化炭素が放出され、不規則な気泡ができたことが考えられる。 ランタンとサマリウムは同じ希土類元素であり、化学的性質は非常に似通っているが、炭酸塩の形性に関しては、若干の違いがあることが考えられる。つまり、酸化サマリウムの方が、二酸化炭素との反応性が高い可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、Sm2O3は測定に適する焼結試料が出来なかったため、引き続き、焼結条件を検討する。具体的には、粉末の調製を、大気下ではなく、二酸化炭素を除去した乾燥窒素雰囲気下で行い、炭酸塩の形成を抑える工夫をする。さらに、焼結のための昇温パターンを工夫する。具体的には、1000℃まで非常にゆっくりとした速度で昇温し、1000℃で一定の時間保持し、二酸化炭素などの脱ガスを行う。その後、再びゆっくりとした速度で1500℃まで昇温し、1500℃で一定の時間保持し、焼結・強化する。得られたSm2O3を用いて物性測定を試みる。 Sm2O3の測定への挑戦と平行して、次の2500℃前後の測定に進む。報告値が無い高融点純酸化物としてSc2O3(融点2489℃)とY2O3(融点2439℃)の測定を行う。同じ3価の酸化物であるLa2O3とSm2O3の測定の知見に基づき実行する。特に周期の違いによる物性値の変化に注目する。
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Causes of Carryover |
当初の計画どおりに研究が進まず、実験試料の消費、購入が十分に進まなかったため。令和2年度は、計画した予定に復帰できるよう研究を速やかに進め、当初の予定通りの実験試料購入を行う。
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