2020 Fiscal Year Annual Research Report
中温作動型燃料電池を実現する空気極触媒電極材料の開発;材料探索フィールドの大転換
Project/Area Number |
19K22041
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小俣 孝久 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80267640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 一誓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (60821717)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 混合伝導体 / プロトン伝導体 / 燃料電池 / 空気極材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではリン酸塩ガラスを電解質とした中温作動型燃料電池の空気極材料に適用可能な新材料としてプロトン・n型電子混合伝導体に注目し,WO3のプロトン・電子混合伝導性の実証と,300℃の空気極雰囲気でもn型電子伝導性を維持する空気極材料の探索を推進し,以下の実績をあげた。 水素をドーピングしたWO3(H0.39WO3)の水素中での全伝導を測定し,300℃で1.5×102 Scm-1であり,電極材料として十分な電子伝導性を有することを確認した。これを隔壁とした水素透過量の測定から,300℃でのプロトンの移動度が9.1×10-5 cm2V-1s-1であることを明らかにした。この移動度とプロトン濃度から,プロトン伝導度は1.1×10-1 Scm-1という高い値であることを見出した。さらにプロトン輸率が1であるリン酸塩ガラスをブロッキング電極としてH0.39WO3のプロトン伝導度を直接測定し,300℃で1.4×10-3 Scm-1と決定した。拡散係数から算出した値の1/100であるものの,リン酸塩ガラス電解質のプロトン伝導度(2×10-3 Scm-1)と同等であり,プロトン伝導度としては極めて高く,WO3が電極材料としては十分なプロトン伝導性とn型電子伝導性を有することを世界に先駆けて明らかにした。唯一,かつ,致命的な欠点は300℃の空気中では水素が脱離し,電子伝導性が消失することである。これを解決するために電子の注入の一部をCaのドーピングが担うCa0.02HxWO3を考案し,300℃の空気中で10 Scm-1という十分な電子伝導性を維持することを見出し,Ca0.02HxWO3が空気極材料に適用可能なプロトン・n型電子混合伝導体であることを明らかにした。
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