2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of the technique to consolidate powder into three-dimensional shape by the shearing plastic deformation
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19K22042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三木 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (80325943)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 機械材料・材料力学 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は金属粉あるいは金属と金属などの固体材料の混合粉に一軸圧縮を与え、その垂直方向にせん断力を与えるプロセスによって粉体が常温常圧下で固化し、成形材の機械的強度向上、結晶配向性付与、機能性向上をもたらすせん断塑性変形による粉体固化技術の高度化に関する研究であるが、本課題では圧縮力とせん断の“同時作用”により、加熱あるいは通電による溶融や焼結を伴わずに微粒子が固化するプロセスについて、準静的な粉末接合現象に基づく積層構造あるいはバルク材造形への適用性を検証し,圧縮せん断法による三次元造形に関する基礎技術の確立を目指している。 令和元年度(初年度)には金属粉のせん断塑性変形による固化とその機械的特性・材料特性評価を実施した。ここでは、金属種によって異なることが予想される固化条件ならびに機械的特性に影響を与える結晶粒微細化の条件を定量的に評価し、成形プロセスにおける特性パラメータを抽出した。さらに、せん断塑性変形による粉末の固化過程のモデル化、多層構造ならびに厚板形状の成形を行い三次元形状の成形可能性の検討にも着手した。具体的な実施項目は以下のとおりである。①せん断塑性変形による薄板の成形パラメータの確立及び微細構造分析:せん断塑性変形プロセスによる成形体を作製し、単元素金属粉における成形パラメータを抽出した。また、成形された金属膜の機械的特性および微細構造分析し、現象論的な成形パラメータをもとに固化モデルを示した。②せん断塑性変形にもとづく三次元構造の形成手法の検討:粉末とバインダを混合することによって作製した多孔質材や線材を用いた成形体を作製し、板厚方向の粒子接合を制御する技術について知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高い造形自由度と簡便さから革新的手法として注目を集めている金属の三次元造形技術であるが、この手法では金属粉末を融点近傍の温度まで加熱し、準固相状態で粉末の接合を行うため、プロセス温度が高く熱変性や酸化物の形成が避けられないことが課題である。粉末造形についてはプロセスの低温化あるいは常温での成形が望まれていることから、本研究では加熱の代わりにせん断力による粉末の変形や粉末間の摩擦によって、融点より十分に低い温度で粉末を固化するせん断塑性変形による手法を提案し、圧縮力とせん断力の同時付与の過程で粉末が接合する手法を応用した粉末の三次元造形技術を確立することを目指している。 研究初年度である令和元年度には、成形条件の異なる成形体の機械的特性・材料特性を評価することよって、金属粉のせん断塑性変形による成形特性を明らかにした。ここでは、成形体の機械的特性に影響を与える結晶粒微細化の条件を抽出し、特性パラメータとすることが出来た。さらに、粉末を用いた多孔質材や線材を用いた成形体を作製し、いくつかの成形条件では原料を十分に固化できることを明らかにした。また、その結果としてせん断方向と直交する板厚方向の粒子接合を制御する技術を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度研究の実施により、せん断塑性変形による薄板の成形パラメータの確立及び微細構造分析ならびにせん断塑性変形にもとづく三次元構造の形成手法の検討を行い、固化条件ならびに機械的特性に影響を与える結晶粒微細化の条件と成形プロセスにおけるマイクロスケールの特性パラメータを得ることが出来た。今後は、この結果を接触面に形成される粒子接合層の段階的成形プロセスとしてモデル化し、せん断塑性変形による粉末の三次元構造の形成過程をモデル化する。また、粉末を密に固化するバルク(板)材に加えて、多孔質材や積層材、複合材などの粒子間の接合状態の異なる材料を評価し、固化特性や機械的特性に影響を与える成形状態を明らかにし、成形プロセスにおけるマイクロスケールの特性パラメータを抽出する。具体的な研究項目は以下のとおりである。 初年度より継続して、①せん断塑性変形による板材の成形パラメータの確立及び微細構造分析(せん断塑性変形プロセスによる成形体を作製し、単元素金属粉における成形パラメータを抽出する。また、成形された金属膜の機械的特性および微細構造分析を実施する)②三次元造形プロセスの確立(せん断塑性変形による新たな粒子接合プロセスとして、粉末の三次元構造形成技術を開発する)を行い、今後は新たに③粒子間接合のモデルの構築(微細組織観察により、せん断力による粒子間接合と原子の拡散の状態を評価し、金属種による差異あるいは類似性を検証する。この時、難成形原料粉においては温度を付与(最高300℃程度)し、成形材の結晶組織および材料特性に与える熱の影響を検証し、原子拡散が接合プロセスへ与える影響を評価する)④摺動プロセスにもとづく粉体固化および微細構造分析(①の知見を反映した現象論的成形パラメータをもとに粒子接合層形成現象をモデル化する)を実施し、粉末の三次元造形技術を確立する。
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Causes of Carryover |
研究の実施計画に変更はなかったが、原材料費と分析委託料を別途予算にて合算購入することが出来たため当初予算に計上した経費による支出が少なくなった。また、令和2年2月ならびに3月に予定していた学会参加等が感染症蔓延によりすべて中止となったため、旅費の支出についても予定していたものとならなかった。ただし、本事業においては研究実績の概要に示したように既存の装置を利用して目標の成果を得ることが出来たので、研究計画に変更の必要がない。そのため、当該研究費は令和2年度実施の研究費として使用する。具体的な支出予定費目は以下の通りである。[物品費(原材料費、加熱金型作製費、電子顕微鏡用消耗品、表面研磨用消耗品、断面試料作製用消耗品、材料加工消耗品)、旅費(成果発表、調査研究、研究打合せ、資料収集)、その他(論文投稿料、学会登録料、分析委託費)] 尚、現状では海外渡航や場合によっては国内への移動も難しい状況が生じると思われるが、Web開催の国際・国内会議での本事業の成果発表を積極的に行い、その費用の一部としても当該予算を充当する予定である。
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