2019 Fiscal Year Research-status Report
多価陽イオン伝導性一軸配向多結晶体の材料設計と開発
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19K22051
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
福田 功一郎 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90189944)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | イオン伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度に実施した研究で、多価陽イオンが高速伝導する無機化合物群を2グループ発見し、それらの広範囲な化学組成で固溶体を作製して、イオン伝導度の組成依存性を解明した。これらの化合物群に関して、特許出願を行なっており、知的財産権を確保済みである。イオン伝導度とイオン輸率の評価方法とその具体的な値を下記に記す。 イオン伝導度は、周波数を4Hz~5MHzの範囲で、温度を400℃~650℃までの50℃刻みで、交流インピーダンス測定により決定した。測定データのナイキストプロットに対して等価回路を作成し、各温度におけるバルク抵抗値Rb(Ω)を求めた。さらにこれらの値をもとに、各温度におけるバルクイオン伝導度σb(Scm-1)を求めた。バルクイオン伝導度σbの値は、400℃では約1.77×10-6Scm-1であり650℃では約1.74×10-5Scm-1であり、温度の上昇にともない一様に増加した。また、イオン伝導の活性化エネルギーは0.61eVであった。この化合物に関して、全電気伝導度に対するイオン伝導度の比率であるイオン輸率を決定した。電気伝導体の全電気伝導度(σTotal)は次式で表される。 σTotal = (σi+) + (σi-) + (σe) + (σh)。ここで、(σi+)は陽イオンの伝導度、(σi-)は陰イオンの伝導度、(σe)は電子伝導度、(σh)は正孔の伝導度である。したがって、イオン輸率tは次式で表される。 t = {(σi+) +( σi-)}/σTotal。電子と正孔の伝導度 {= (σe) +( σh)} の値は600℃で約1.63×10-6Scm-1であり、バルクイオン伝導度σbの値は600℃で約1.51×10-5Scm-1であった。したがって、600℃におけるイオン輸率tiの値は約0.90となり、当該化合物はほぼ純粋なイオン伝導体であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来報告されていた陽イオン伝導性の化合物とは全く異なる化学組成・結晶構造の新規化合物群を、2種類発見したこと。さらに、広範囲な化学組成で固溶体を作製して、イオン伝導度の組成依存性を解明することができた。令和元年度の研究計画を十分に達成していることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の結晶配向手法では、テンプレート粒子の準備が必要である、または特殊な装置が要求されるなど、複雑なプロセスが必要であった。今後、当研究室のオリジナルな結晶配向手法である「固相-固相反応拡散法」と「気相-固相反応拡散法」を駆使することで、それぞれの特長を生かした配向多結晶体の作製を行い、結晶構造と化学組成、微細組織を最適化することで、イオン伝導度のさらなる向上を目指したい。
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Causes of Carryover |
結晶配向を専門とする研究者との共同研究打ち合わせを3月に予定し、学生を帯同して出張する計画であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大が進む中で外出自粛要請があり、これに従ったことから当該出張を取りやめることにした。これが当該予算に対して次年度使用が生じた理由である。次年度中に外出自粛要請が解除され、かつ感染症の収束が見込まれる状況になった時点で、先述の共同研究打ち合わせを当該予算を用いて行う計画である。
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Research Products
(3 results)