2019 Fiscal Year Research-status Report
Magnetic strengthening - Novel approach for material strengthening-
Project/Area Number |
19K22052
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新津 甲大 京都大学, 工学研究科, 助教 (90733890)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
|
Keywords | 磁性転位 / 磁性強化 / 材料強化 / 転位 / 磁性 / 部分転位 / 逆位相境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はB2-FeAl合金を主たる研究対象とし、その合金単結晶作製と塑性変形に伴うミクロ組織の発展・形態観察(ショックレー部分転位、転位分解幅の計測、すべり系の同定、電子線ホログラフィー観察など)、さらに超伝導磁束干渉計(MPMS)を用いた転位導入に伴う磁化の変化の調査を行った。 その結果、Floating Zone法により粗大な単結晶育成に成功し、種々の圧縮歪を導入した単結晶片の磁化測定により有意な磁化の増大の検出・キュリー温度の評価に成功した。塑性変形に伴う強磁性発現の起源を調べるため、すべり面に平行に切り出した薄片の透過型顕微鏡観察および電子線ホログラフィー観察を行った。観察結果としては転位は2本のショックレー部分転位に分解しており、その分解幅約20nmに渡り逆位相境界が形成されていた。この領域を電子線ホログラフィー観察した結果、極めて小さいながら強磁性に由来する電子波の位相変化が検出できた。このことから転位の分解により逆位相境界が生じ、これが強磁性を帯びることが塑性変形誘起強磁性の起源であることが分かった。一方で部分転位近傍の磁気状態については、観察の空間分解能の制約から知見を得ることができなかった。 今後は超高圧電子線ホログラフィー顕微鏡を活用することで、より高い空間・位相分解能で観察を行っていく。また同時に、この逆位相境界(すなわち原子周期構造の変化)がFeの磁気モーメントにどう作用するか第一原理計算を行っており、実験・理論両面からの裏付けを進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
規則度の高い合金を研究対象として、塑性変形に伴う強磁性発現を観測、またその起源が部分転位間の逆位相境界であることまでを見出した。単結晶育成や物性測定の実験推移は極めて順調であり、さらに時間を要する透過型顕微鏡観察や電子線ホログラフィー観察までを年度内に行うことができた。概ね想定通りの知見が得られており、今後論文投稿に向けてより詳細な調査・解析を行っていく。 2019年度では当初の実施計画を上回る進展が見られたため、次年度に向けての研究課題はより明確となっており、引き続き順調に遂行できる算段が立っている。また超高圧電子線ホログラフィー顕微鏡を用いた共同研究やMPMS内で圧縮試験を行うためのサンプルプレス機構の自作設計などにも既に着手しており、次年度ではよりチャレンジングな課題にも挑戦する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度では研究計画を大所から見通すため、バルク物性やすべり系解析などの研究が主であった。この中で得られた知見をもとに、2020年度では塑性変形に伴う強磁性発現の起源や第一原理計算に基づく電子論的解釈など、よりIn-depthな研究を進める。特に強磁性発現を担う欠陥として、逆位相境界がキーとなることが分かったが、部分転位そのものの磁気状態については実験・理論両面から全く不明である。今後は超高圧電子線ホログラフィー顕微鏡を用い、部分転位近傍の磁気状態を原子分解能でとらえることを試みる。併せて第一原理計算により部分転位近傍の部分状態密度を計算し、実験・理論両面から部分転位近傍の原子構造を磁性の相関について研究する。 一方でMPMS内で圧縮試験を行うためのサンプルプレス機構の作製が本年度に完了する。これにより極低温・強磁場中での圧縮変形や、圧縮変形に伴う磁化変化をIn-situで調査することが可能となる。外場と転位内磁性の相互作用により磁性のドラッグ効果が観測できると期待している。今後はこのようなよりチャレンジングな研究にも着手していく。
|